フランク・J・フェティータ3世、ロレンツォ・フェティータ(Frank J. Fertitta III and Lorenzo Fertitta)
拠点:アメリカ・ラスベガス
職業:カジノ事業(Station Casinos)、投資家(Fertitta Capital)
収集分野:近現代アート
父親からラスベガスのカジノ事業を受け継いだフランクとロレンツォのフェティータ兄弟は、経営が苦しくなっていた総合格闘技団体アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)を2001年に200万ドル(約2億9000万円)で買収して資産を拡大。50億ドル(約7200億円)規模の企業へと成長させた後、2017年8月に所有していたUFC株を売却した。ロレンツォはUFCの経営に関するワシントン・ポスト紙の取材に答え、「ネガティブなイメージばかりが取り沙汰されていたから、米国で最悪のブランドだったかもしれない」と語った。現在UFCは、トロント、サンパウロ、シンガポール、ロンドンにオフィスを構え、149カ国、30言語で数十億人の視聴者を抱えるまでになっている。
フェティータ兄弟は、父のフランク・フェティータ・Jrに倣って、20年以上前からアート収集をしてきた。息子のフランクが最初に手に入れた作品は、19世紀フランスのアカデミズム絵画を代表する画家、ウィリアム=アドルフ・ブグローの「朝の朝食」(1887)だったが、その後はダミアン・ハースト、クリストファー・ウール、ブライス・マーデン、リチャード・プリンスといった現代アーティストへ手を広げている。特に数が多いのはアメリカン・ポップと抽象表現主義の作品で、フランクはUS版ARTnewsに、お気に入りの作品はウォーホルの花をモチーフとした作品の1枚だと明かした。「ずっと昔からこれが好きで、このシリーズの作品をサイズ違いで何点か持っている」
彼らの運営する高級ホテル、パームズ・カジノ・リゾートは、ハースト、ジャン=ミシェル・バスキア、村上隆、KAWSなど、多くの著名アーティストの作品が飾られていることで有名だ。同ホテルのアートキュレーター、タル・クーパーマンは、「フランクとロレンツォが考えているのは、よりニッチな作品を見てもらいたいということです」と、ニューヨーク・ポスト紙に語っている。「彼らから一流のアート作品についていろいろ教えてもらいました。そのうえで、ストリートアートのアイデアをミックスさせています」
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。