デニス&ゲイリー・ガードナー(Denise and Gary Gardner)
拠点:アメリカ・シカゴ
職業:消費財
収集分野:現代アート(主にアフリカ系アメリカ人の作家)
2021年、デニス・ガードナーはシカゴ美術館の理事長に選出され、アメリカにおける主要美術館の理事会を率いる初の黒人女性として歴史に名を刻んだ。彼女は夫のゲイリーとともに、その十数年前から活発なアート収集を続けている。
ガードナー夫妻のコレクションには、ノーマン・ルイス、ジャック・ウィッテン、エリザベス・キャトレット、チャールズ・ホワイトといった美術史上の重要作家も含まれているが、特に重点を置いているのが存命のアフリカ系アメリカ人アーティストへの支援だ。代表的なアーティストとしては、ケリー・ジェームズ・マーシャル、チャールズ・ゲインズ、フランク・ボウリング、ラシッド・ジョンソン、フィレレイ・バエズ、サンフォード・ビガーズ、ジュヌヴィエーヴ・ガイニャール、ベサニー・コリンズ、キャンディダ・アルバレス、ローナ・シンプソン、リネット・ヤドム=ボアキエ、サミュエル・リーヴァイ・ジョーンズ、ダウード・ベイ、レオナルド・ドリュー、キャリー・メイ・ウィームス、そして2022年にシカゴ美術館で大規模個展が開かれたイグシャーン・アダムスなどが挙げられる。
中でもキャリー・メイ・ウィームスはコレクションの中心的存在で、数年前にはウィームスの大作を飾る壁が足りなくなったほどだ。そこでゲイリーは、自宅の1階を改装してギャラリーのホワイトキューブのような空間を作ろうと思い立った。十分な天井高を確保するため、数週間かけて地面を掘り、床面を50cmほど低くしたという。
US版ARTnewsのメール取材に夫妻はこう語った。「私たちは、コレクションのためには行動ありきと考えています。作家について調べたり、作品を鑑賞したりするだけではなく、アーティストと交流してその創作活動を見たり、ギャラリーやキュレーターから作品の評価を聞いたりします。さらに、どの作品が私たちのコレクションに最も合うかを考えること、そして何よりも作品とともに暮らすこと、そうした全ての側面を楽しんでいます」
ガードナー夫妻はアートを収集するだけでなく、アフリカ系アメリカ人アーティストの作品がより多くの人々、特に若者の目に触れ、評価されることを目指している。その活動の一環として、シカゴ美術館を中心に、中西部のさまざまな美術館で数多くの展覧会を後援しているほか、シカゴ美術館付属美術大学にデニス&ゲイリー・ガードナー奨学金を設立し、マイナーな人種の学生を支援している。
「まだまだやることはあります」と夫妻は言う。「さまざまな地理的条件やアイデンティティを持つアーティストがきちんと認められ、美術史の一角を占めるようになるためにはどうすればよいか、そして、より多くの人々や地域社会がアートを知り、鑑賞し、そこからインスピレーションを得られるようにするには何が必要か、課題は尽きません」
ゲイリーは美容・ヘアケア製品分野でキャリアを積み、デニスと共同設立したエスニックHBA(家庭医薬品・美容・パーソナルケア)企業は業界ナンバーワンとなっている。1990年代には別の大手企業で社長を務め、そこではデニスがマーケティングチームを率いていた。近年、デニスはマーケティングコンサルティング会社の社長に就任し、ゲイリーは未公開企業への投資という形で起業家を支援している。