マーティン・Z・マーグリーズ(Martin Z. Margulies)
拠点:アメリカ・フロリダ州キービスケーン、ニューヨーク
職業:不動産デベロッパー
収集分野:近現代アート
マーティン・Z・マーグリーズは2008年のインタビューで、8億ドル(約1160億円)にのぼると評価される自身のコレクションについて、こう表現した。「私の性格を反映しているのかもしれません。私の人生における外的・内的体験の集大成ですから」
マーグリーズの個性は、マイアミのウィンウッド地区にあるスペース「ウェアハウス」でも十分に発揮されている。彼は1999年に非営利団体としてウェアハウスを設立し、アメリカやヨーロッパの現代アート5000点以上を収蔵。学生や来館者にアートエデュケーションを提供している。かつて「アートとは、自分自身を学び、教育することである」と語ったマーグリーズは、その信念をコレクターである自分自身で実行している。「自分を教育することは決して終わらない。永遠に」
5000点を超えるコレクションの中で、マーグリーズが最も高く評価しているのは、アメリカの画家・彫刻家であるジョージ・シーガルの《Subway》(1968)だ。この作品では、不思議な雰囲気の白い石膏像が地下鉄の座席にぽつんと1人で座っている。「ジョージは良き友人であり、素晴らしい人物でした」と、マーグリーズはUS版ARTnewsに語っている。
コレクション内容は、彫刻、映像、ミクストメディア、サイトスペシフィック・インスタレーションまで幅広く、アルゼンチンのアーティスト、レアンドロ・エルリッヒによる幻想的な映像インスタレーション《Elevator Pitch》(2011)や、カメルーン出身のアーティスト、パスカル・マルティン・タイユーが小さなボウルや動物の彫刻を集めて作った《Paradise Is Truth》(2010)のほか、アルテ・ポーヴェラの作品などもある。ロイ・リキテンシュタイン、ドナルド・ジャッド、アンゼルム・キーファーなどの代表作をはじめ、新しい収蔵品も鑑賞することができるウェアハウスには、毎年12月のアートバーゼル・マイアミ・ビーチのためにやってくる多くの人々が訪れる。
*1 アルテ・ポーヴェラは「貧しい芸術」の意。1960年代〜70年代初頭にイタリアで興った芸術運動で、新聞紙、木材、石、鉄などが多用された。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。