エレン&ミヒャエル・リンギエー(Ellen and Michael Ringier)

拠点:スイス・チューリッヒ
職業:出版、デジタルマーケットプレース(Ringier AG)
収集分野:現代アート、ロシア・アヴァンギャルド

スイス出版界の大物、ミヒャエル・リンギエーは、30年以上にわたってアート収集を続け、ロシア構成主義を含む現代アートの一大コレクションを築き上げてきた。チューリッヒの別荘に保管している所有作品は約2000点にのぼるが、収集にあたっては元アムステルダム市立美術館のキュレーター、ベアトリクス・ルフがアドバイスをしたという。一族が印刷業を営んでいたミヒャエルは。雑誌Monopolの発行などで出版界の雄となった。その傘下には、美術出版を行うJRP リンギエーもある。

ミヒャエルは、チューリッヒにあるJRPリンギエー本社に自身のコレクションから約200点の作品を展示し、1997年からは同社の年次報告書のデザインに毎年アーティストを起用している。たとえば、2014年はウェイド・ガイトン、2011年はマウリツィオ・カテランのデザインだった。さらに、トップ200コレクターズの1人、マーヤ・ホフマンと、新進キュレーターのためのプログラムを共同設立している。

しかし、2017年にベアトリクス・ルフがアムステルダム市立美術館の芸術監督を突然辞任すると、リンギエーもルフをめぐる疑惑に巻き込まれることになる。ルフは、自らのアドバイザリー会社カレントマターズへ利益誘導を図ったのではないかと疑われ、調査の結果、2015年にカレントマターズは、オランダの税務当局に約50万ドル(約7200万円)の利益を報告していたことが判明した。ルフはニューヨーク・タイムズ紙に対する声明で、「カレントマターズの損益計算書には、2015年以前に行われた活動からの正当な収入、主としてリンギエー・コレクションからの過去の仕事に対する謝礼100万フラン(約1億5000万円)が含まれている」と述べている。後日、リンギエーは、ルフに100万フランの「謝礼」を渡したことを認め、ルフのアドバイスは「数千万から数億」の価値を彼のコレクションにもたらしたとしている。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。
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