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今週末に見たいアートイベントTOP5: 三菱一号館美術館のリニューアル展、スプツニ子!が提示する「テクノロジーと共存する未来」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

田村友一郎 ATM(水戸芸術館現代美術センター)より、《裏切りの海 Milky Bay》「BODY/PLAY/POLITICS」、横浜美術館、横浜、インスタレーション、2016/アジアン・アート・ビエンナーレ、国立台湾美術館、台中、2019

1. 「現在地のまなざし 日本の新進作家 vol.21」(東京都写真美術館)

かんのさゆり〈New Standard Landscape〉より 2022 年 作家蔵
©Sayuri Kanno

5作家の表現から社会や環境、人との関係性を考える

「日本の新進作家」展は、写真・映像の可能性に挑戦する新しい創造活動の展開の場として2002年より開催されるグループ展。21回目となる本展では、社会、環境、人と人との関係性を自身の立ち位置から問い直し、写真を通して世界の断片を提示する5人の作家たちの試みを紹介する。

参加作家は、身のまわりにあるささやかな存在に目を向け、写真を用いて時間を留める大田黒衣美、東日本大震災以降、かつての風景に代わって仮設的に変化を続ける景色を観察し記録するかんのさゆり、ドキュメンタリーの視点と虚実を混ぜたイメージで現実をあぶりだす千賀健史、一般的な概念にとらわれず個と個の距離と関係性を切り取る金川晋吾、誰かが見た光景を通じて見るものが持つ記憶を喚起させる原田裕規。

「現在地のまなざし 日本の新進作家 vol.21」
会期:10月17日(木)~2025年1月19日(日)
場所:東京都写真美術館(東京都目黒区三田1-13-3)
時間:10:00~18:00、(1月1・2日を除く木・金曜は20:00まで、入館は30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、12月29日〜1月1日


2. #40 アピチャッポン・ウィーラセタクン、ハルーン・ミルザ、目[mé]、和田礼治郎(SCAI PARK)

Apichatpong Weerasethakul Memoria,Pijao (Ever Astudillo) 2017 Giclee Print h.150 × w.220 cm × 2 pcs AP 1/2 + Edition 3 Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE

所属作家5人の新旧作を一堂に

SCAI THE BATHHOUSE所属作家の新作や、所蔵作品などを展示するグループ展。

参加作家は、孤独な夢や近しい身内の物語、抑圧された集団の記憶など、心の片隅に追いやられた不穏な心理を予感させるアピチャッポン・ウィーラセタクン、光と音を繋ぐ彫刻を制作するハルーン・ミルザ、場の特性を読み込んだ状況の構築と圧倒的な視覚の訴求力で知られる現代アートチーム 目[mé]、宇宙、生命、時間などの形而上学的な主題への関心を物理的な現象や力学による独自の手法で彫刻化する和田礼治郎。鑑賞はガラス越しとなる。

#40 アピチャッポン・ウィーラセタクン、ハルーン・ミルザ、目[mé]、和田礼治郎
会期:10月29日(火)〜終了日未定
場所:SCAI PARK(東京都品川区東品川1-33-10)
時間:12:00〜18:00
休館日:日月祝


3. スプツニ子! Can I Believe in a Fortunate Tomorrow? ー幸せな明日を信じてもよい?ー(KOTARO NUKAGA)

「Can I Believe in a Fortunate Tomorrow? ー幸せな明日を信じてもよい?ー」メインビジュアル《Drone in Search for a Four-Leaf Clover》

スプツニ子!が描くテクノロジーと共存する未来

マルチメディアアーティストで映像作家としても知られるスプツニ子!による個展。本展では、国際的にも高評価を得ている作品《Drone in Search for a Four-Leaf Clover》、彩雲をAIによってシミュレートした映像作品《Can I Believe in a Fortunate Tomorrow?》、2つのモニターに、さまざまな人類の課題について議論をしつづける2人の男性が映し出される《Tech Bro Debates Humanity》というAIを駆使した3つのシリーズ作品を提示する。

かつてわたしたちが夢見たテクノロジーとのプリミティブな共存という未来の現在位置を示すとともに、その再検討をも促す。

スプツニ子! Can I Believe in a Fortunate Tomorrow? ー幸せな明日を信じてもよい?ー
会期:11月2日(土)〜2025年1月25日(土)
場所:KOTARO NUKAGA(東京都品川区東品川1-32-8)
時間: 11:00〜18:00
休館日:日月祝


4. 田村友一郎 ATM(水戸芸術館現代美術ギャラリー)

《Sky Eyes》「話しているのは誰?現代美術に潜む文学」、国立新美術館、東京、インスタレーション、2019/神秘的参与、明当代美術館、上海、2020

田村友一郎のテキストから生まれる新たな物語

田村友一郎はこれまで、写真、映像、インスタレーションからパフォーマンスや舞台まで、多彩なメディアを横断して制作を続けてきた。ある土地の持つ、固有の歴史的主題から身近な大衆的主題まで幅広い着想源をもとに、現実と虚構を交差させた多層的な物語を構築することで、既存の歴史や記憶へ新たな解釈を付与している。

本展では「Art Tower Mito」の略称「ATM」から着想を得た新作《ATM》を発表。来場者は、田村がこれまで書き綴った膨大なテキストを手がかりとして生成AIが創作するショートストーリーによって、田村の過去作の断片を辿りながら新たな物語を紡ぎ出すことができる。

田村友一郎 ATM
会期:11月2日(土)~2025年1月26日(日) 
場所:水戸芸術館現代美術ギャラリー(茨城県水戸市五軒町1-6-8)
時間:10:00〜18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌平日)、12月27日~1月3日 


5. 三菱一号館美術館 再開館記念 『不在』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル(三菱一号館美術館)

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《『彼女たち』 行水の女―たらい》、1896年、リトグラフ/紙、三菱一号館美術館蔵

ロートレックとソフィ・カルの作品から「不在」を考察

三菱一号館美術館のリニューアル・オープン最初の展覧会として、美術館のコレクションと展覧会活動の核をなすアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの作品を改めて紹介。所蔵作品にフランス国立図書館の版画11点を加えた136点を展示する。

本展は現代フランスを代表する美術家ソフィ・カルを招聘し協働した。長年にわたり、カルは「喪失」や「不在」について考察を巡らせていることから、「不在」をテーマとした。会場ではカルのテキストと写真を融合した手法で構成された代表的なシリーズを紹介するとともに、ロートレックの作品を「不在」とその表裏の関係にある「存在」という視点から見直す。

三菱一号館美術館 再開館記念 『不在』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル
会期:11月23日(土)〜2025年1月26日(日)
場所:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2)
時間:10:00〜18:00(金曜、会期最終週平日、第2水曜日は20時まで、入館は30分前まで)
休館日:月曜、12月31日、1月1日(11月25日、12月30日、1月13・20日は開館)

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