Airbnbがコロッセオで剣闘士なりきりイベントを開催! 「遺跡は遊園地じゃない」との非難も
現在公開中の映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』にちなんで、Airbnbは来年ローマのコロッセオで剣闘士(グラディエーター)になりきれるスペシャルイベントを開催する。だがこれについて政治家らは「得するのは主催者だけ」と異議を唱えている。
ローマ帝国時代の剣闘士(グラディエーター)の姿を描いた、リドリー・スコットの名作『グラディエーター』(2000年)の続編『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』が現在公開中だ。それにちなんでAirbnbはパラマウント・ピクチャーズと提携し、2025年に古代ローマの遺跡コロッセオでイベントを開催する。
イタリア・ローマの中心部にあるコロッセオは、西暦72年にローマ皇帝ヴェスパシアヌスが建設を開始し、息子のティトゥス帝治世下の西暦80年に完成。全長約188メートル、幅約156メートル、高さ約33メートルと、現存する古代ローマ時代の円形闘技場で世界最大規模を誇り、フラウィウス円形闘技場という名で、異国の動物の展示や、囚人の処刑、剣闘士の戦いといった見せ物を市民に提供していた。現在は当時の息吹を感じられる遺跡として、世界中から大勢の観光客が訪れている。
そんなコロッセオでの体験イベントは、2025年5月7日から8日にかけて行われる。1回3時間、定員は16人で、参加者は日没後に松明の灯る地下の準備室に入り、当時のものを再現した様々な種類の鎧や武器を身に着けて競技場に向かう。そこで繰り広げられる熟練の剣闘士たちの試合を見学した後に、実際に自分たちも戦闘術を学んで闘うという内容だ。ブドウ、ザクロ、アーモンド、クルミといったローマ時代の食事も付く。
だがこのイベントに対して異議の声が相次いでいる。元欧州議会議員のマッシミリアーノ・スメリリオはInstagramに「コロッセオで剣闘士のショーが行われるというニュースには、控え目に言っても当惑させられます。世界で最も重要なモニュメントのひとつをテーマパークにしてしまうわけにはいきません」というメッセージを投稿し、AirbnbのCEOとローマ文化財監督局にもイベントの中止を求める手紙を送った。
また、旅行業界専門メディアTravelPulseのライター、レイシー・ファルツは、このイベントを「文化体験というよりも、ソーシャルメディアを使った宣伝」と評し、USA Todayに次のように語った。
「Airbnbがコロッセオの教育プログラムの一部に資金援助してくれるのは嬉しいですが、その代わりに『剣闘士の体験イベント』が行われる訳です。(イベントは)コロッセオを訪れる誰もが体験できるわけではないし、この遺跡は訪問者が少なすぎて危機に瀕しているわけでもない。この恩恵を受けるのは主にAirbnbだけのようです」
古代ローマの遺跡の活用法について物議を醸したのは今回だけではない。最近の例では2023年、ラッパーのトラヴィス・スコットがコロッセオの近くにある戦車競技場跡チルコ・マッシモでコンサートを行った際、数千人の観客が同時にジャンプしたため地震レベルの広範囲の揺れが発生。コロッセオの館長はこの場所でコンサートを行わないよう呼びかけた。(翻訳:編集部)
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