コマル・シャー&ガウラヴ・ガーグ(Komal Shah and Gaurav Garg)
拠点:アメリカ・カリフォルニア州アザートン
職業:ベンチャーキャピタル
収集分野:現代アート

ビジネス界のパワーカップルと言われるコマル・シャーとガウラヴ・ガーグ。コマル・シャーは、オラクル、ネットスケープ、ヤフーなどのハイテク企業でエンジニアや幹部として働くかたわら、さまざまな非営利団体の資金調達キャンペーンを組織している。一方のガーグは、2013年にシリコンバレーを拠点とするウィング・ベンチャー・キャピタルを共同設立し、同社のマネージング・パートナーの地位にある。
シャーは、サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)の収蔵品委員会やロンドンのテート・モダンの北米収蔵品委員会のメンバーを務めるなど、美術館の作品取得において重要な役割を果たしている。そして2018年には、SFMOMAとテート・アメリカズ財団の理事に就任した。
2008年以来の熱心なコレクターであるシャーは、US版ARTnewsの取材に、「女性アーティストや有色人種のアーティストを中心に収集している」と回答。また、ヒンドゥー・ビジネス・ライン紙のインタビューでは、4人の女性抽象画家──エイミー・シルマン、シャルライン・フォン・ハイル、ジャクリーン・ハンフリーズ、ローラ・オーエンス──の作品が、彼女のコレクションの「核」になっていると語った。そのほかの所蔵作家には、ジョアン・ミッチェルやマーク・ブラッドフォード、サム・ギリアムといった著名アーティストがいる。
2019年にシャーとガーグは、ジョアン・ミッチェルが1992年に制作した無題の絵画を入手(1992年は画家の没年)。シャーは、オークションで人気の高いミッチェルの熱烈なファンだという。ちなみに、ミッチェルのオークション最高額となった作品は、2023年11月にクリスティーズ・ニューヨークで落札された《Untitled》(1959)で、手数料込み2920万ドル(約42億6000万円)だった。
サンフランシスコ・ベイエリアを拠点とするシャーとガーグは、スタンフォード大学で「アーティスト・オン・ザ・フューチャー」というトークショーを定期的に開催。アートと社会・政治問題の接点に光を当てたこのトークシリーズでは、これまでにアーティストのローナ・シンプソンとフォード財団理事長ダレン・ウォーカーの対談、キュレーターのキンバリー・ドリューとアーティストのリンダ・ベングリスの対談などが行われている。
収集したアート作品のために自宅に手を入れることもあるという2人は、US版ARTnewsにこう語った。「チャールズ・ゲインズの2.4×3×1.8メートルの《TreeXL #9》を飾るのに、天井高を上げる工事をしなければなりませんでした。また、他の作品でも階段や暖炉を取り外すなどの改装をしています」