エミール・スティップ(Emile Stipp)

拠点:イギリス・ロンドン、南アフリカ・プレトリア
職業:金融業
収集分野:アフリカおよびアフリカンディアスポラの現代アート(主にビデオ・アート)

金融コングロマリットのディスカバリーでチーフ・アクチュアリー(保険数理士)を務めるエミール・スティップは、ロンドンと南アフリカのプレトリアを行き来する生活を送る。南アフリカのアートシーンで有名なスティップはまた、テートのアフリカ・アクイジション委員会のメンバーであり、アフリカの現代アート作品をテート・モダンとシカゴ美術館に寄贈している。

アフリカとアフリカから世界へと散らばった移民の子孫による現代アートを中心としたスティップのコレクションには、ザネレ・ムホリ、デイヴィッド・ゴールドブラット、ニコラス・フロボ、エドソン・シャーガスなど、絵画、彫刻、写真などのアーティストが名を連ねる。しかし、最も注力しているのはビデオ・アートで、ディネオ・セシー・ボパペ、クザナイ・チウライ、エメカ・オグボー、ドナ・クカマなどの作品を所有している。

「ビデオ・アートは、私の人生や私が生きてきた時代を映し出す鏡のようなものです」とスティップは語る。「それは、私の個人的な経験を超越した物語であり、私たちが直面する政治的、宗教的な分裂を克服する可能性を示しています。毎日、こうした意味のある作品を目にし、それが生活の一部になっているのは嬉しいかぎりですし、20年以上にわたりアフリカの現代アーティストを支援することができてとてもラッキーです」

最近では、南アフリカ生まれのアーティスト、アーネスト・マンコバのようなモダニストの先駆者による作品にも興味を持つようになったとスティップは言う。アーネスト・マンコバは、CoBrAのメンバーであり、アーティスト仲間だった白人のソニア・フェルロフと結婚したために亡命生活を送ることになった人物だ。「彼はヨーロッパでは正当な評価を受けられず、南アフリカでは忘れ去られた存在でした。彼の美術史への貢献は唯一無二のものなのに」

マンコバの作品が市場に出回るのは「ごく稀」であるため、スティップは1958年作の無題のドローイングが2021年にケープタウンのギャラリー、スティーブンソンで展示されたときには即決で購入している。彼はこう付け加えた。「私は今、この作品が自分のコレクションを代表するものだと考えています」