シェイカ・アル=マヤッサ・ビン・ハマド・ビン・ハリーファ・アル=サーニー(Sheikha Al Mayassa bint Hamad bin Khalifa Al Thani)
拠点:カタール・ドーハ
職業:フィランソロピスト(カタール博物館議長)
収集分野:近現代アート
2006年からカタール博物館議長を務めているシェイカ・アル=マヤッサ・ビン・ハマド・ビン・ハリーファ・アル=サーニーの美術品購入予算は、年間10億ドル(約1450億円)と見られている。彼女がダミアン・ハースト、リチャード・セラ、ジェフ・クーンズ、アンディ・ウォーホルなど、欧米の近現代アートを積極的に購入しているのは、カタールの若手アーティストやアーティスト志望者には、アート界の最先端で何が起きているかを知ってもらうことが重要だと考えているからだ。
シェイカはニューヨーク・タイムズ紙に、「私の父(前カタール首長)は、平和のためにはまずお互いの文化を尊重する必要があるとよく言っています」と語ったことがある。現代のメディチ家と呼ばれるカタール王室は、2012年にセザンヌの《カード遊びをする人々》を2億5000万ドル(約362億円)で落札し、当時の最高落札額を樹立したとされる。また、複数の情報筋によると、カタール美術館庁は、2015年に実業家でコレクターだったルドルフ・シュテヘリンが、ポール・ゴーギャンの絵画をプライベートセールに出したときの買い手であったという。ゴーギャン売却の噂を聞いていたというニューヨークのアートアドバイザー、トッド・レヴィンは、ニューヨーク・タイムズ紙に「当時、私に提示された価格は3億ドル(435億円)をやや下回るくらいだった」と語っている。
カタール王室はこのほかにも、2007年にマーク・ロスコの《White Center (Yellow, Pink and Lavender)》を7280万ドル(約105億円)で、2010年にはアンディ・ウォーホルの《The Men in Her Life》を6340万ドル(約92億円)で購入。さらに同王室は、ドーハにアラブ近代美術館やI.M.ペイ設計のイスラム美術館を設立するなど、湾岸地域の文化施設の充実とコレクション拡大に尽力している。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。