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  • 2023.08.29

「すべてが破壊されている」──エジプト・カイロの近代化計画がもたらす文化的損失

アラブ文化圏の中心地、エジプト・カイロの近代化が止まらない。しかし、国際社会が注目するこの一大計画により、アーティストや工芸職人たちを含む住人の多くが、住居や活動拠点を失いつつある。

2023年8月26日、新たな道路建設のためブルドーザーで取り壊される、エジプト・カイロのモハメッド・アリ・パシャ・モスク前の歴史的な墓地。この墓地は、ユネスコの世界遺産に登録されているカイロ歴史地区にある。Photo: AP/Aflo

ニューヨーク・タイムズ紙が報じたところによると、エジプト・カイロの労働者階級の住民たちは、政府による近代化計画によって自分たちの家や緑地、遺跡、親しまれてきた文化的空間が街から消失していくのを目の当たりにしているという。

古代の墓や墓地は新しい開発や道路建設のために壊され、ナイル川のほとりには、ファーストフード店やカフェ、軍所有のガソリンスタンドが乱立している。同紙はまた、環境への影響も顧みずに、政府は樹木や公園までもを破壊していると報じている。

地元住民たちの証言によれば、渋滞緩和のために計画された新しい高速道路や、新しく建設された高層アパートが、歴史的なカイロの街並みをがらりと変えてしまったという。何世代にもわたってカイロに暮らしてきた彼らは、いつ自分たちが住む場所を追われるかと不安を抱えている。

アーティストのモアタズ・ナスレルディンが2007年に設立し、ダルブ地区にある文化センター「ダルブ1718」もまた、破壊される可能性のある場所のひとつだ。

ある日、地区の役人がダルブ1718を訪れ、政府が高架高速道路の建設のため施設の裏通りを拡幅する必要があるとナスレルディンに伝えたという。退去命令も出ておらず、書類上の手続きも全くなされていないにもかかわらず、ナスレルディンはここを去らなければならなくなった。それは、近隣にある築数十年の陶芸工房や住宅も同じだ。

「毎朝目を覚ますたびに、あまりに色々なことが起きているんです」

そう語るのは、取り壊しが決まった陶芸工房のひとつを所有し、1920年代からこの地域で代々陶工として働いてきたモハメド・アブディンだ。

近代化計画には、ダルブ近郊の労働者階級が住む住宅街を壊して建設されたエジプト国立文明博物館や、590億ドル(約8兆6000億円)もの予算が投じられた新首都──高速鉄道でアクセスでき、手付かずの道路網に囲まれている──も含まれる。

建築家で都市計画の専門家、マムドゥー・サクルは、ニューヨーク・タイムズ紙にこう語った。

「誰でも自分の街が侵略されると知れば、記念碑や樹木、歴史、文化を守りたいと思うはず。しかし今、理由も説明も必要性もないままに、すべてが破壊されているのです」(翻訳:編集部)

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