合衆国憲法の原本に赤い粉を撒いた2人の活動家に実刑判決。「環境保護ではなく単なる破壊行為」
今年初め、2人の環境活動家がワシントンD.C.の国立公文書館に展示されているアメリカ合衆国憲法原本の保護ケースに赤い粉を撒く抗議行動を行った。この件の裁判の判決が11月15日に下され、2人は実刑を言い渡された。
ワシントンD.C.の国立公文書館の円形広間には、アメリカ合衆国憲法と独立宣言のオリジナルが厳重に展示されている。2024年初め、2人の環境活動家が合衆国憲法の展示ケースに赤い粉を撒く抗議行動を行ったが、この件の裁判の判決が11月15日に下されたとABCニュースが報じた。
今回罪に問われたのは、環境活動団体「Declare Emergency」のリーダーであるメリーランド州のドナルド・ゼペダとユタ州のジャクソン・グリーン。ゼペダには2年、グリーンには18カ月の実刑判決が下された。いずれも釈放の際は2年間の保護観察付きとなる。
また、検察官は、この抗議行動の際に大量の赤い粉が来館者に恐怖を与え、展示室の修復作業のために4日間施設を閉鎖した事についても言及し、展示ケースの修理代の実費5万8607.59ドル(約902万円)を連邦政府記録管理局に支払うよう2人に命じた。
この判決を受けて、グリーンは声明で次のような反省の弁を述べた。
「私は、自分たちの行動が他者に重大な被害を与えない方法で行われていると本気で思っていました。しかし、今ではその考えがどれほど無知で配慮に欠けていたかを理解しています。また、私の意図に関わらず、今回引き起こした被害は現実のものであり、私の責任であることも認識しています」
「私が実行したような破壊的な抗議行動は、個人に直接的な被害をもたらすだけでなく、ネガティブな反応を生み出し、むしろ人々を気候変動への活動から遠ざけ、さらなる不和を生み出すことで、私たちの意図とは正反対の結果を招く可能性があることに気づきました」
一方で、ゼペダは自らの行動を擁護し、化石燃料産業との関わりや気候危機への適切な対応の欠如を理由に政府を非難した。そしてゼペダは、「私たちは、次の世代に先送りしないように、今目の前に迫る恐怖や感情をリアルに感じ取らなければなりません」と主張した。
この裁判を担当した米国地区裁判所のエイミー・バーマン・ジャクソン判事は、彼らの行動を「深刻さに欠け、効果もなく、気候の緊急事態とは何ら関係のないもの」と評した。そして彼女は、「(環境活動家が意図的に破壊や妨害行為を行う)エコ・バンダリズムは良い考えではないというメッセージは明確にしなければなりません」と続け、「環境保護ではなく単なる破壊行為です」と断言した。
今回ゼペダの刑が重かったのは、気候変動に関する抗議行動を長年行っていたためだ。彼は他の活動家たちとともに繰り返し道路を封鎖し、2017年には石油施設に侵入した罪で2か月の実刑判決を受けた。そして2023年4月、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに展示されたエドガー・ドガ《14歳の踊り子》の展示ケースに赤いペンキを塗りつける抗議行動の計画と実行を支援し、その様子を撮影。同年11月には再びナショナル・ギャラリーで、グリーンと共に南北戦争のアフリカ系アメリカ人記念碑の隣の壁に赤いペンキで「彼らを称えよ」と書いた。(翻訳:編集部)
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