「アメリカに対する共謀犯罪」──ドガの彫刻を狙った環境活動家を米司法省が起訴
ワシントンDCのナショナル・ギャラリーで4月27日、2人の環境活動家が、ドガの彫刻《Little Dancer Aged Fourteen》の台座とケースに塗料をぬりつけた事件に対して、アメリカ司法省は2人を「アメリカに対する共謀犯罪」と「美術館の展示物や財産に対する傷害」で起訴した。
公開された起訴状によると、抗議行動を行ったティム・マーティンとジョアンナ・スミスは、共謀者とともに展示物について調査を行い、事前にメディアなどに抗議行動を告知。その上で2人は、塗料が入ったペットボトルを携え美術館に入り、ドガの彫刻のケース、台座、床にその塗料をぬりつけたという。
マーティンとスミスは、環境活動団体「Declare Emergency」のメンバー。今回の行動は、同団体がジョージ・ワシントン・メモリアル・パークウェイの一部を閉鎖し、周辺の交通渋滞を引き起こした抗議行動の数日後に行われた。彼らは、気候変動への注意を喚起するとともに、ジョー・バイデン大統領に気候変動に関する緊急事態宣言の発令と、化石燃料の新規掘削許可や補助金の中止を要求していた。
連邦当局は、マーティンとスミスがナショナル・ギャラリー側に2400ドル(約33万円)の損害と、10日間の作品撤去期間を生じさせたと主張している。この事件を受け、同館のケイウィン・フェルドマン館長は、ツイッターで動画による声明を発表した。
司法省のプレスリリースによると、2人の活動家はともに自首しており、5月26日に身柄を拘束されている。この事件はFBIワシントン支局のアートクライムチームが中心となって捜査しており、ナショナルギャラリー・オブ・アート警察と米国公園警察も協力している。
有罪判決を受けた場合、マーティンとスミスは最高で5年の禁固刑と、25万ドル(3520万円)以下の罰金に処されることになる。
環境活動家による、美術品を狙った抗議行動は、以前からヨーロッパ、オーストラリア、カナダの美術館で起こっており、これまで、フェルメール、ゴヤ、モネ、ゴッホ、ルーベンスなど、名だたる画家の作品が標的にされてきた。
最近では、これらの抗議行動に対して罰則を課すようになっている。イタリアの広場にある彫刻を標的にした抗議行動に際しては、文化財の損壊に対して修復費用を負担させる法律が可決されたり、2022年11月にハーグでフェルメールの《真珠の耳飾りの少女》を狙った件では、2人の活動家が禁固2カ月の判決を受けたりしている。(翻訳:編集部)
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