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ドガの彫刻を塗料で汚す。アメリカで環境活動家が抗議行動

4月27日、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーで、スーツ姿の環境活動家2人が、エドガー・ドガの彫刻《Little Dancer Aged Fourteen》のケースと台座に塗料をぬりつけ、その場で逮捕された。

ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーで行われた、環境活動家による抗議行動の様子。Photo: Courtesy of Declare Emergency

環境活動団体、Declare Emergency所属のノースカロライナ州ローリー出身のティム・マーティン(54)とブルックリン出身のジョアンナ・スミス(53)よるこの抗議行動は、気候危機への注意を喚起することを目的としている。抗議者たちは、ジョー・バイデン大統領に対し、化石燃料に対する新たな掘削許可や、補助を停止するよう要求している。

今回の標的となったのは、ワシントン・ナショナル・ギャラリーに展示されていたエドガー・ドガの彫刻《Little Dancer Aged Fourteen》。ワシントン・ポスト紙によると、マーティンは、「多くのアメリカ人と同じように、我々の子どもたちのために、現在起こっている気候変動や生物多様性の危機を心配しています。今、リーダーたちが立ち上がり、違いを越えて連帯することが必要です」と話しているという。

ワシントン・ナショナル・ギャラリーのケイウィン・フェルドマン館長は、この抗議行動に対し、Twitterで以下のようにコメントした。

「同館の専門家チームが、抗議行動で受けたダメージを詳細に調べるため、作品を展示から外しました。私たちはこの行為に対して明確に抗議し、今後も情報が入り次第、共有していきます」

Declare Emergencyの広報担当者は、US版ARTnewsのメール取材に対し、「私たちは、社会におけるアートの価値と重要性を理解しています。また、気候変動に対して緊急性を持って取り組まなければ、アートと私たちが愛するものすべてが危険にさらされることも知っています」と回答。また、この抗議活動は、美術館の芸術作品と同じような保護を環境に対して行わないことで、将来、子どもたちが受ける被害の懸念によって実施されたことを強調した。

広報担当者は、「私たちは、できる限り非暴力的な方法で、この状況がいかに悲惨であるかを伝えなければなりません。今回のような美術品をターゲットにした行動は、私たちの感情的な部分に訴えます。そのような状態になって初めて、自分たちを本当に救おうと思えるのです」とも話している。

ワシントン・ナショナル・ギャラリーでの行動は、ヨーロッパ、オーストラリア、カナダの美術館にまたがる様々な環境活動団体による抗議活動の一環だ。これまで抗議者は、フェルメールゴヤモネゴッホルーベンスなど、数々の巨匠の作品を標的にしてきた

イタリアでは、2023年3月に起こった、公共の広場に設置された彫刻を標的にした抗議活動に対して罰金を求めており、オランダでは、2022年11月、ハーグのマウリッツハイス美術館に展示されているフェルメールの《真珠の耳飾りの少女》を狙った2人の活動家に2ヶ月の禁固刑を言い渡している。(翻訳:編集部)

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