環境活動家が塗料を撒き散らした19世紀の彫刻に深刻なダメージ。当局は修復費用請求を検討
イタリア・ミラノで、3月9日に環境活動家グループが金色の塗料をかけた19世紀の彫刻は、修復が必要な状態であるとイタリア当局が発表した。
今回被害に遭った彫刻は、ミラノのドゥオーモ広場にある、イタリアの芸術家エルコレ・ローザが設計したサルデーニャ王国最後の国王、ヴィットリオ・エマヌエーレ2世の戦勝を記念するブロンズ騎馬像とその台座。環境活動家グループ、Ultima Generazioneによるデモ中に、同グループのメンバーである26歳の男性と23歳の女性の2人が彫刻に金色の塗料をかけ、その場で警官に逮捕された。
イタリア文化省によると、ミラノ市はデモの後、彫刻を清掃しようとしたが元通りにはならなかったという。ミラノ市当局は、同団体が歴史的な彫刻に深刻な損傷を与えたと非難し、民事訴訟を検討していることをイタリアのニュースメディアに伝えた。対して活動家グループは、彫刻に永久的な損傷を与えるはずがないと主張している。
Ultima Generazioneは、「市民的不服従」を掲げる気候変動団体、A22ネットワークに所属している。同団体のウェブサイトによると、今回のデモは、イタリア政府の化石燃料採掘への投資に抗議するために行われ、公開声明の中で「イタリア政府は2021年だけで418億ユーロ(約6兆円)を化石燃料の採掘に投資している」と政府を避難している。
今回のデモは、イタリアでも最近増加している環境活動家による公共の場での抗議活動のうちの1つ。ローマでは、15世紀に建てられたイタリア上院のファサードと、スペイン広場にある17世紀に建てられたピエトロ・ベルニーニ設計の噴水に塗料がかけられた。
こうした抗議行動の増加により、イタリア政府とデモ参加者の間の緊張は高まるばかりだ。そんな中、先週、イタリア政府は、国内のモニュメントや文化施設を破壊した個人に対し、修復費用を賄うための罰金を課す法律を可決したばかりだ。イタリアのジェンナーロ・サンジウリアーノ文化相は、声明で「公共のモニュメントを狙った場合、すべての人に経済的損害を補償してもらう」と警告している。
今回の一件について、サンジウリアーノ文化相は、「大きな費用を伴う、本格的な修復作業が必要だと見ている」と述べているが、修復にともなう推定費用は明らかにされていない。(翻訳:編集部)
from ARTnews