《ひまわり》にスープをかけた活動家3名に抗議活動の禁止命令。「抗議と犯罪の境界線が曖昧になっている」
ロンドンのナショナル・ギャラリーに収蔵されている2点の《ひまわり》にスープをかけたとして起訴された「ジャスト・ストップ・オイル」の活動家3名に対して、抗議活動を禁ずる判決が下された。
フィンセント・ファン・ゴッホの絵画にスープを投げつけたことから9月に起訴された環境保護団体「ジャスト・ストップ・オイル(JSO)」の活動家3名が、ロンドン市内における抗議活動を禁ずる判決が言い渡された。
これの判決は、大英博物館を含むイギリス各地でJSOが実施した抗議活動の後に言い渡されたものであると同時に、博物館の館長らが、美術品を使ったデモ行為をやめるよう求めた公開書簡を発表した後に下されている。
メアリー・サマーヴィル(77歳)、スティーブン・シンプソン(71歳)、フィリッパ・グリーン(24歳)の3人は、ロンドンのナショナル・ギャラリーに収蔵されているゴッホによる二つの《ひまわり》にトマトスープを9月27日に投げつけ、作品の額縁を破損した容疑で起訴されている。この抗議活動は、JSOの活動家であるフィービー・プラマーとアンナ・ホランドが実刑判決を受けた翌日に実施された。
サマーヴィル、シンプソン、グリーンはロンドンの裁判所で、器物損壊の罪2件について無罪を主張。3人の活動家は現在保釈されており、2025年1月に裁判が行われる予定だ。判事を務めたアレクサンダー・ミルンは、JSOの活動家3人がロンドンの主要環状道路であるM25モーターウェイで行われる抗議活動への参加を禁じており、BBCに対して次のように語っている。
「抗議する権利の行使が被告にも存在することは認めますが、権利を行使することと、罪を犯すことの境界線があまりにも曖昧になっているように思われる」
10月下旬にJSOは、リバプールにあるビートルズのブロンズ像や大英博物館にあるギリシャ神話の女神、デメテルの像、そしてロンドンの国会議事堂前にあるネルソン・マンデラの銅像をはじめとする彫像作品に、反射ベストと「Just Stop Famine(食糧不足を止めろ)」と書かれた吹き出しを像にまとわせて、気候変動が食糧供給に及ぼす影響を訴えていた。
また、パレスチナへの連帯を示す抗議活動の一環として、国会議事堂の前で「Politics is Broken(政治は腐敗している)」と題された行進が11月2日に行われる予定だ。
イギリスの美術館評議会「National Museum Direcotor’s Coulcil(NMDC)」が10月11日に発表した公開書簡では、2022年7月以降のロンドンのナショナルギャラリーにおける5つの事件が取り上げられており、その中にはJSOの活動家が関与したものも含まれている。書簡では、フィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》、ジョン・コンスタブルの《乾草の車》、ディエゴ・ベラスケスの《鏡のヴィーナス》を標的とした抗議活動について言及しており、次のように記されている。
「JSOによる行為は、国内の美術館・博物館の評判を大きく毀損するものであり、文化施設で働く人々に多大なストレスを与えている。また、過激化するアートアタックにより、国内最高峰の博物館や美術館に安心して足を運べなくなった人々も存在する」(翻訳:編集部)
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