フランス政府が石斧などをエチオピアに「引き渡し」。アフリカへの文化遺産返還は進展なし
フランス政府は11月30日、政府が保管していたエチオピアの先史時代の遺物3点を返還した。だがフランス側は遺物を所蔵したつもりはなく、「返還ではなく引き渡し」であると強調している。
11月30日、フランスのジャン=ヌーヴェル・バロ外相は、エチオピアの首都アディスアベバのエチオピア国立博物館で式典を行い、先史時代の石斧2点と、石のナイフをエチオピアのセラミウィット・カッサ観光大臣に引き渡した。
これらは20世紀にフランスの研究者ジャン・シャヴァイヨン(1925-2013)の指揮の下、エチオピアの首都近郊にある100万~200万年前の先史時代の遺跡、メルカ・クンツァレで数十年にわたって実施された発掘調査で出土したものだ。この調査で約3500点が見つかり、遺物はアディスアベバのフランス大使館に保管されていた。
だが、今回の返還に際してアラブ・ニュースが行った取材に、フランス大使館の文化アドバイザーであるローラン・セローは、「これらの品々はフランス政府のコレクションであったことは一度もありません。返還ではなく引き渡しです」と強調した。
11月30日の式典で、バロ仏外相は700万ユーロ(約11億円)を投じた両国間の新たなプロジェクト「エチオピアの持続可能な遺産」も発表した。フランスのEntrevue誌によると、このプロジェクトは、研究者、地方自治体、コミュニティ間のパートナーシップを通じて、エチオピアの遺産を広く伝えていくものだという。これは127年にわたって両国間で結ばれた考古学と古生物学分野に関する二国間協定の一環でもある。この2年間でも、フランス政府はエチオピア国立博物館の改修工事に2500万ユーロ(約39億円)を出資している。
だが、2017年11月、フランスのエマニュエル・マクロン大統領がアフリカの文化遺産を返還する計画を発表した件については、法案を審議する日程が組まれる気配もなく、現在も全く進展が見られない。(翻訳:編集部)
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