オンライン販売されていた「聖なる石板」を大学講師が発見。エチオピアに返還される
1868年、エチオピアとイギリス間のマグダラの戦いでイギリス軍に奪われた、エチオピア正教にまつわる石版が、9月25日、ロンドンの同正教教会で行われた礼拝で返還された。
石板が返還された、ロンドンのセント・メアリー・オブ・デブレ・ツィオン教会。2017年撮影。Photo: Courtesy Wikimedia Commons
タボット(Tabot)とも呼ばれる旧約聖書の十戒が刻まれた石板は、エチオピアのキリスト教にとって聖櫃を象徴する重要なものだ。
ロンドン大学講師のヤコポ・グニッシは、オンライン販売でこのタボットを見つけた。売り主にエチオピアへ返すよう説得できなかった彼は、安全に返すことを目的にタボットを購入。返還はロンドンのシェヘラザード財団を通して行われることとなった。
そしてタボットは、ロンドン南部のバタシーにあるエチオピア正教会のセント・メアリー・オブ・デブレ・ツィオン教会に運ばれた。
エチオピアのキリスト教では、タボットは聖職者だけが見ることが許されている。そのため、タボットは豪華な布に包まれた状態で、およそ1500人の参列者に披露された。タボットは今後エチオピアに戻される予定だ。
このタボットの返還が成功すれば、大英博物館に対する目がさらに厳しくなる可能性がある。同館は、11点におよぶ英国最大級のタボットコレクションを所蔵しているからだ。これらはエチオピア正教会の伝統に従って、学芸員でさえ見ることのできない地下倉庫に厳重に保管されている。それに対してエチオピア正教会の司祭は、将来イギリスにある同正教会に貸し出すことを条件に、見ることを許可している。(翻訳:編集部)
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