ARTnewsJAPAN

BIOPICのための鑑賞時間を設けたドイツの博物館に対し、白人右派の非難が激化

植民地主義がテーマの展覧会「This Is Colonial」を開催中のドルトムントにあるツェッヒ・ツォレルン博物館が、白人右派からの激しい非難にさらされている。一体何があったのか。

ツェッヒ・ツォレルン博物館の警備にあたる警察。Photo: Sascha Thelen/Picture Alliance via Getty Images

ワシントン・ポスト紙は先週、植民地主義をテーマにした展覧会「This Is Colonial」を開催中のドルトムントにあるツェッヒ・ツォレルン博物館が、毎週土曜日の4時間をBIPOC(Black, Indigenous, and People of Color=黒人、先住民、有色人種)の来館者のための時間とすると決定したことに対し、右翼の反発が激化していると報じた。現在、美術館には警察が常駐している。

この展覧会では、ドイツ国内外における植民地支配の歴史に関するワークショップや体験型パフォーマンスも行われている。ドイツは植民地時代、ナミビアで7万5000人にもおよぶ大量殺人を行った。両国間の5年以上にわたる交渉を経て、ドイツ政府は2021年に初めて、これが自国によるジェノサイドであったと認めている。

地元の産業博物館のキルステン・バウマン館長はフェイスブックで、同館のこの措置は、「植民地主義という問題の影響を受けている人々に配慮する」目的で、BIPOCが「This Is Colonial」展を安全に見学することができるように充てたスペースであると説明している。ただし、その時間帯に来館した人が監視されることはない。

今回の措置が世界的に知られることとなったのは、本件をめぐって同館のスタッフと2人の白人男性が対立する様子を撮影したTikTok動画が拡散したのがきっかけだ。この動画の中で男性たちは、博物館が白人差別をしていると非難している。一方、この動画が同意なしに撮影されたとして、博物館の職員は名誉毀損で法的措置を取るとも報じられている。

ちなみに、BIPOCの人々のための時間帯とはしているものの、これはあくまで推奨であり、白人の来館者を拒むものではない。しかし、美術館が一部の白人コミュニティから反発を受け続けており、スタッフに対する脅迫もあったことから、来月の企画展終了まで警察が美術館で警備にあたる見込みだ。

from ARTnews

あわせて読みたい