エリ・クーリ(Elie Khouri)
拠点:アラブ首長国連邦・ドバイ
職業:コミュニケーションおよびメディア事業(オムニコム・メディア・グループ)、ファミリーオフィス(ヴィヴィウム・ホールディング)
収集分野:現代アート
アートを買うことが生活の一部になっているコレクターは多いが、エリ・クーリの場合はその上を行っている。アートへの情熱を「中毒」と表現する彼は、自らのコレクションについて「投資として考えるのではなく、あくまでも自分が好きなものとして捉えています」と言う。
クーリが初めてアートを購入したのは2000年代後半で、レバノン出身の画家ナビル・ナハスの作品だった。それ以来、毎年30〜35点の作品がコレクションに加わり、2021年にはドバイのアーツクラブでコレクション展が開かれている。所蔵作家はジュリー・カーティス、ギュンター・フェルグ、キャロル・ボヴェ、ダナ・シュッツ、ケヒンデ・ワイリーなど、抽象画も具象画もあり、一流アーティストとして認められ始めた若手からベテランアーティストまで多岐にわたる。
クーリは以前、サザビーズにこう語っていた。「私がコレクションしている作家たちは、グローバル化や移民、アイデンティティ、政治、オンライン時代のコミュニケーション、そして真理、美、自然への問いかけや考察を続けています。大胆な抽象画、身体性を深く追求したもの、そして従来の絵画や彫刻の在り方に新しいアプローチで取り組む作品に惹かれるのです」
金融分野でキャリアを積んだクーリは2000年にメディア界へ移り、オムニコム・メディア・グループで中東・北アフリカ地域を担当。同地域のCEOを経て現在は会長を務めている。また、2017年にはドバイを拠点にアート、デザイン、不動産に投資を行うファミリーオフィス、ヴィヴィウム・ホールディングを立ち上げた。
さらに、美術館の支援にも力を注ぎ、テートで中東・北アフリカ地域の作品取得委員を務めている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)でもメディア・パフォーマンス委員を務める彼が取得に貢献した作品の中には、ローレンス・アブ・ハムダンの映像作品《Walled Unwalled》(2018)などがある。