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今週末に見たいアートイベントTOP5: 海外展から選んだ森⼭⼤道の希少作を公開、NYのお騒がせアート集団MSCHFの日本初個展

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

リウ・チュアン《リチウムの湖とポリフォニーの島Ⅱ》2023年 Courtesy of the artist

1. 森⼭⼤道「TOKYO」(Akio Nagasawa Gallery Ginza)

©︎Daido Moriyama Photo Foundation, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

海外展から厳選した、森⼭⼤道の希少な作品を公開

「アレ・ブレ・ボケ」と呼ばれる手法で写真界に革新を起こし、85歳となった今も日本を代表し続ける 写真家、森⼭⼤道。粗い粒子と、コントラストが強いモノクロのストリートスナップは、一目でそれが森山の作品だと教えてくれる。今回、海外の展覧会に出品した作品の中から、日本国内では展示機会が少なかった作品を厳選して公開する。貴重な作品群を見られるチャンスを逃す手はないだろう。

展示作品は、2021年に森山と東松照明がパリのMEP(ヨーロッパ写真館)で開いた「Moriyama – Tomatsu: Tokyo」展と、構成などを変えて翌年にローマのMAXXI(イタリア国立21世紀美術館)へ巡回した「TOKYO REVISITED. Daido Moriyama with Shomei Tomatsu」展への出品作から選ばれた。モノクロの作品を中心に展示され、会場に森山の世界観が広がる。過去に出版された森山の関連書籍を集めた販売コーナーもある。

森⼭⼤道「TOKYO」
会期:1月11日(木)~ 3月30日(土)
会場:Akio Nagasawa Gallery Ginza(東京都中央区銀座4-9-5 銀昭ビル6F)
時間: 11:00 ~ 19:00(⼟曜は13:00 ~ 14:00⼀時休廊)

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2. MSCHF「No shoes. No phone. No service.」(3110NZ by LDH kitchen)

MSCHF《Locked Apple iPhone7 containing the phone numbers of The Weeknd, Jared Leto,Ashton Kutcher, BJNovak, Kyle Lowry,Jamie Foxx,IvankaTrump,AndreIguodala,Grimes,Steve Aoki, Bad》(2022)Locked, jailbroken Apple iPhone 7,password not included H18.2 x W11.2 x D2.5cm

物議を呼ぶ、ブルックリンのアート集団が日本初個展

ニューヨークのブルックリンに拠点を構えるアート集団「MSCHF(ミスチーフ)」の日本初個展。同じ発音の“Mischief(いたずら)”に由来する彼らは、文化や政治、貨幣社会の不合理性や滑稽さなどを暴き出すコンセプチュアルな作品を展開してきた。その手法は鮮烈で度々物議を醸してきたが、日本でも報じられた《サタン・シューズ(Satan Shoes)》が代表的だろう。NIKEのスニーカーAIRMAX97を無許可で改造して、エアソールの部分に人間の血を入れて販売したものだ。

本展では、2022年に発表された2つの作品シリーズを紹介する。「Wavy Sneakers」は、各種スニーカーブランドの有名モデルを、波状のかたちにデフォルメした作品。商標登録され権利が担保されているブランドロゴやデザインが歪められた時、どこまで価値が保てるのかを批評的に検証する。「Celebrity iPhones」 は、セレブたちの電話番号を実際に登録したiPhoneを作品化したもの。ミーハーな群集心理的欲望と個人情報保護という、相反するもののせめぎ合いを提示する。

MSCHF「No shoes. No phone. No service.」
会期: 1月17日(水) ~ 3月9日(土)
会場:3110NZ by LDH kitchen(東京都目黒区青葉台1-18-7)
時間:11:00 ~ 16:00(金曜と土曜は17:00まで)


3. KIMYONA UTSUKUSISA(The 5th Floor)

YOSHIROTTEN SUN Monolith ©︎ YOSHIROTTEN Photo Yushi Arimura

異なる背景を持つ3作家の視点が浮かび上がらせる、現代の歪んだ自然観

キュラトリアル・スペースのThe 5th Floorと、美術館の展示からアートフェアまで多種多様なアートに関するサービスを提供する「Nozza Service」の共同キュレーション。各国の美術館やギャラリーでアート作品の発表を続けながら、ファッションや音楽、テクノロジーなど様々なジャンルを横断して活動する、ヨシロットン、ジョナサン・ザワダ、ラッセル・モーリスの3作家にスポットを当てる。ヨシロットンは、純粋芸術と商業美術、デジタルと身体性など、複数の領域を往来しながら活動し、2023年にはマルチメディア・アートプロジェクトの「SUN」を発表した。ザワダは、コンセプチュアル・アート、グラフィック・デザインなど異なる分野の技術を組み合わせながら、「自身がデジタル経験を通して得た感覚」を主題に作品を制作。イギリス出身で現在は日本を拠点に活動するモーリスは、ヨーロッパにおけるグラフィティ文化から発祥したムーブメント「Comic Abstraction」の第一人者であり、身近な生物や自然物の造形パターンなどをサンプリング・リミックスしながら、コラージュによる抽象的なイメージの絵画や彫刻などを作り上げる。

本展では、3人の新作と旧作を織り交ぜて展示することで、彼らの眼差しが向かう先を浮かび上がらせる。ヨシロットンは過去に大型個展で発表した《FUTURE NATURE》(2018)と 《SUN》(2023)を再展示し、ザワダはNFT技術を介した記憶のあり方やその未来への伝承の可能性などの視点から展開された作品を発表、モーリスは、自然と人間の手による造作が無作為に混じり合う風景を切り取る新作を披露する。

KIMYONA UTSUKUSISA
会期: 1月20日(土) ~ 2月4日(日)
会場:The 5th Floor(東京都台東区池之端 3-3-9 花園アレイ 5F)
時間:13:00 ~ 20:00


4. 未完の始まり:未来のヴンダーカンマー(豊田市美術館)

リウ・チュアン《リチウムの湖とポリフォニーの島Ⅱ》2023年 Courtesy of the artist

世界各地の5作家から、 “驚異の部屋”の未来を探る

展覧会名の「ヴンダーカンマー」とは、“驚異の部屋”を意味する言葉。15世紀から18世紀にヨーロッパの王侯貴族の邸宅に作られた陳列室で、異文化に対する好奇のまなざしの下、世界中からあらゆる名品や珍品が集められた。絵画や彫刻、動物の剥製や植物標本、地図や天球儀、東洋の陶磁器……まさに博物館や美術館のさきがけといえる。今回「ヴンダーカンマー」がテーマに選ばれたのは、豊田市美術館に隣接して、4月26日に豊田市博物館がオープンするため。文化やアイデンティティの捉え方が大きく変容した現代において、世界各地の美術家5人の作品を通じて未来に向けた博物館の姿を考える。

作品は作家別に展示される。参加するのはいずれも40代の、リゥ・チュアン(中国)、タウス・マハチェヴァ(旧ソ連)、ガブリエル・リコ(メキシコ)、田村友一郎、ヤン・ヴォー(ベトナム)。ガブリエル・リコは、ネオン管と剥製の野ウサギを対峙させたインスタレーションなどを発表し、神話や自然環境、現在の消費社会などにまなざしを向ける。田村友一郎は、映像を組み合わせた新作インスタレーションを制作した。ジョン・レノンの生成AIがナレーションするシュミレーション映像、iPhone、約300万年前の猿人の骨などのモチーフを使って「人類規模の技術の進展」を思考した。

未完の始まり:未来のヴンダーカンマー
会期:1月20日(土)~ 5月6日(月・祝)
会場:豊田市美術館(愛知県豊田市小坂本町8-5-1)
時間:10:00 ~ 17:30  (入場は30分前まで)


5.  「DIARIO 」(アートディーラーS収集作品より)(Gallery10[TOH])

展示風景

ヴィック・ムニーズ、ガブリエル・オロスコetc.国際的アートディーラーの交友とコレクションを紹介

アートディーラーやアドバイザーとして世界を巡る塩原将志が、自身のコレクションの中から中南米の国際的アーティストを中心に紹介する。アートコレクターの作品収集を手伝う傍ら、自身も作品を集めてきたという塩原。一般的なコレクションというよりも、友情を築いてきたアーティストたちとの「絵日記」や「作品日記」のようなものだと話す。毎年のように訪れるブラジルやメキシコなどの作家たちとの、20年以上にわたる “日記=DIARIO”を一般公開する。

塩原の“友人”たちは、実に豪華な面々だ。集めたゴミを用いたモザイク画のポートレートや、砂糖やチョコレートなどを画材にした作品で知られるヴィック・ムニーズのほか、パリのポンピドゥー・センターでの大規模インスタレーションなど、世界で活躍するステファン・ブルッゲマンなど。2015年に東京都現代美術館でも展覧会を開いたガブリエル・オロスコもいる。その他の出展作家に、ボスコ・ソディ、アシューム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカス、Shinnosuke Miyake、ジャナイナ・チェッペ、ゴンサロ・レブリハ、ホセ・ダヴィラ、セルジオ・シスターらも名を連ねる、贅沢な展示となる。

「DIARIO 」(アートディーラーS収集作品より)
会期: 1月24日(水)~ 2月11日(日)
会場:Gallery10[TOH](東京都渋谷区千駄ケ谷5-20-11 第一シルバービル1B)
時間:13:00 ~ 20:00 

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