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今週末に見たいアートイベントTOP5: 杉本博司が最新シリーズを初公開、山口晃が雪舟、セザンヌと「セッション」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

山口晃《来迎圖》2015 年、作家蔵、撮影:浅井謙介(NISSHAエフエイト株式会社)©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery

1. 六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond(神戸市・六甲山上)

写真:伊丹豪/ロゴマーク:佐貫絢郁/アートディレクション・デザイン:芝野健太(株式会社ライブアートブックス)

六甲山上を舞台に50組のアーティストが作品を発表

神戸市・六甲山上で毎年秋に開催される現代アートの芸術祭。14回目となる今年は、「表現の向こう側(にあるもの) Beyond Representation」というテーマのもと、従来の価値観に縛られず、新しい価値観を提示し、社会との共生を模索する表現者たちの作品とその先にあるものに焦点を当てる。

今回は、ROKKO森の音ミュージアム、六甲高山植物園、六甲ケーブル(下駅・山上駅・天覧台)、風の教会エリアなど六甲山上の9会場を舞台に、国内外で活躍する50組のアーティストが作品を発表する。おもな作家は美術作品を中心に制作する開発好明、2021年VOCA賞を受賞し、人々の営みや、伝承、土地の風景や歴史から生成したドローイングや彫刻を制作している尾花賢一、動物などをモチーフに「触れ合える彫刻」を制作する菅原陸など。

六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond
会期:8月26日(土)~ 11月23日(木・祝)
会場:ROKKO森の音ミュージアム(神戸市灘区六甲山町北六甲4512‐145)ほか全9会場
時間:10:00 ~ 17:00 ※会場により異なる


2. ステファン・サグマイスター 「ナウ・イズ・ベター」(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)

《独裁政権下の飢餓》 1880年以降の各政権下での飢饉 カンヴァスに描かれた古典的油彩画にラッカー塗装した木材を埋め込んだ作品 2023年

世界的デザイナーが人生をポジティブに表現した新作を公開

エアロスミスや、ローリング・ストーンズなどのCDジャケットを手掛けた、ニューヨークのグラフィックデザイナー、ステファン・サグマイスター。これまで皮肉を込めたショッキングなビジュアルの作品で見る者の心を揺さぶってきたが、同ギャラリーでは20年ぶりの個展となる本展は、人生を肯定的に捉え、新しい視点から世界を見つめた新作を展示する。

広い視野から眺めた世の中の変化を、19世紀の古典的絵画を大胆に改造したり、見る角度によって絵柄や立体感が変化するレンチキュラーの効果を活かしたりしながら、視覚化した。同時に、SNSやメディアからの情報過多に挑むチャレンジとしても位置づけている。本人いわく「これまでで最も人生を肯定する展覧会」だという。展示を通じて何かを感じ、考えるきっかけにしてもらいたい。

ステファン・サグマイスター 「ナウ・イズ・ベター」
会期:8月30日(水)~ 10月23日(月)
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル 1F・ B1F)
時間:11:00 ~ 19:00


3. Storm Tharp: Summer Hours(KOKI ARTS)

アメリカの作家がモノタイプで描き出す、時間の流れと夏の感覚

オレゴン州を拠点に活動するストーム・サープの日本初個展。日常生活の一場面を切り取り、映し出す作品で知られており、フォードファミリー財団のHallie Ford Fellowshipを含む多くのアワードを受賞したほか、2010年にはホイットニー・ビエンナーレに参加。作品は数多くの美術館のコレクションに収められている。

「Summer Hours」というコンセプトで開催される本展は、時間の流れと夏の感覚を表現した新作モノタイプの作品が7点展示される。作品制作についてサープは、「丹念な描写と即興的な追求の間でバランスを取り、それによって新しい言語と美学が生まれる」という。作家が紡いだ、物憂げながらも美しい瞬間を楽しんでもらいたい。

Storm Tharp: Summer Hours
会期:9月1日(金)~ 9月30日(土)
会場:KOKI ARTS(東京都千代田区東神田1-15-2ローズビル1F)
時間:12:00 ~ 19:00  


4. 杉本博司 火遊び Playing with Fire(ギャラリー小柳)

杉本博司 Brush Impression 0884 2023年 ゼラチン・シルバー・プリント ©︎ Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

杉本博司が暗室で制作した実験的な最新シリーズを初公開

日本を代表する写真家、現代美術家、杉本博司の個展。本展では最新シリーズ「Brush Impression」を初公開する。杉本は、コロナ禍後3年ぶりにニューヨークのスタジオに戻った際に劣化した印画紙を発見。美術品が劣化の中で美しさを増すことを考え、これらの印画紙に暗室での実験を重ね、書を揮った。

展示は、同シリーズから《火》を中心に構成する。これは、杉本が子どもの頃から火との関わりを持ち、思春期から学生時代にかけて火遊びを通じて人生の転機を経験してきたエピソードが基になっている。伝統的な和歌の「本歌取り」という手法を応用し、文字と自然の形象である「炎」を結びつけ、新たな表現を試みた作品も含まれており、杉本の文字の起源についての考察もうかがい知ることができる。

杉本博司 火遊び Playing with Fire
会期:9月5日(火)~ 10月27日(金)
会場:ギャラリー小柳(東京都中央区銀座1-7-5小柳ビル9F)
時間:12:00 ~ 19:00 


5. ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃

ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン(アーティゾン美術館)

山口 晃《来迎圖》(部分)2015年 作家蔵 撮影:宮島径 ©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery

山口晃と石橋財団コレクションの「セッション」。初公開作品も

アーティストと、アーティゾン美術館学芸員が共同し、石橋財団コレクションの作品からインスパイアを受けた新作や、コレクションとアーティストの作品の交流を通じて生み出される新たな視点に焦点を当てて構成される展覧会シリーズ「ジャム・セッション」。

今回は、日本の伝統的な絵画様式を取り入れ、油彩技法を駆使して作品を制作する山口晃を迎える。山口が同コレクションから選んだ雪舟の《四季山水図》とセザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》と共に、これらの作品を基に制作したインスタレーションを展示する。

本展ではさらに、東京メトロ日本橋駅パブリックアートや、NHK大河ドラマ「いだてん 〜東京オリムピック噺〜」のオープニングタイトルバック画などの作品の原画を初公開。また、追体験的なインスタレーションも並ぶ。

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン
会期:9月9日(土)~ 11月19日(日)
会場:アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)
時間:10:00 ~ 18:00  (祝日をのぞく金曜は20:00まで)

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