「表現の不自由展」、抗議を受けるも再び開催
日本での検閲の歴史を取り上げ、物議を醸した展覧会「表現の不自由展・その後」が全編、東京の公立施設で4月2~5日、「表現の不自由展 東京2022」として再公開された。
今回の再展示は、展覧会の開催をめぐる検閲騒動の最新事例だ。はじまりは2019年に名古屋で開催された「あいちトリエンナーレ2019」での展覧会だった。
展示が始まって3日後、韓国のアーティスト、キム・ソギョンとキム・ウンソンによる彫刻作品《平和の少女像》に対する批評が憤出し、展示は閉鎖された。この彫刻は、第二次世界大戦中に日本軍によって強制的に性的奴隷にされた、アジア各国(多くは朝鮮半島出身者)の「慰安婦」を追悼するものだ。
慰安婦は、日本で最もデリケートな歴史的事件の一つであり、以来、数十年にわたって修正論の的になってきた。
「あいち」での展示は、地元自治体の関係者や来場者から批判を浴びた。会場に対する脅迫もあり、最も憂慮すべきケースは「展示を続けるなら会場に火をつける」と脅す匿名のファックスだった。同トリエンナーレの津田大介芸術監督は暴力の激化を恐れ、展覧会の閉鎖を決定した。
「表現の不自由展・その後」の主催者は2022年3月25日、追加したうえで展覧会を再開すると発表した。《平和の少女像》は、日本軍による強制売春の被害者の写真や、戦前の日本政府を批判する作品と一緒に展示される予定で、再び怒りの声が上がる恐れがある。
実行委員会の岩崎貞明代表は記者会見で、「いろいろな表現で人々が沈黙を強いられている時代に、皇室制度、植民地支配、日本軍の慰安婦、原発問題といったテーマについて、自由に考える機会を提供する」ために、この展覧会を開催すると話した。「ウクライナ侵攻後、ロシアでは戦争に反対するメディアが統制の対象になっている。いま一度、表現の自由の大切さを考える必要がある」
あいちトリエンナーレ2019の閉幕を受け、90人以上の参加アーティストのうち約70人が、「表現の不自由展・その後」展の閉鎖を「検閲」と呼び、来場者とスタッフの安全を確保できる会場で再開するよう求める文書に署名し、ネットで公開した。同トリエンナーレに出品した国際的なアーティストたちも、「表現の不自由展・その後」の閉鎖を強く非難し、再開されるまで自作を撤去するよう求める公式書簡を発表した。
韓国のハンギョレ紙によると、同展実行委員会は2021年、東京の個人ギャラリーで「表現の不自由展・その後」の再展示を試みた。だが右翼に街宣車や拡声器で妨害、威嚇され、延期されていた。
委員会の岡本有佳共同代表は、3月25日の記者会見で、更なる威嚇や妨害の可能性を予想して、200人以上が警備のボランティアをすると語った。「アーティストと市民の力で、展示会場の安全を守れると確信しています」(翻訳:編集部)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年3月29日に掲載されました。元記事はこちら。