マリー・アントワネットのファッション展がV&Aで9月開幕! 華麗な衣装から食器まで250点を紹介
フランス最後の王妃であり、歴史に残るファッションアイコンとして現代のデザイナーにも多大なインスピレーションを与えているマリー・アントワネットに焦点を当てた展覧会が、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館サウスケンジントンで開かれる。ヴェルサイユ宮殿からも、門外不出の品が貸し出されるとあって期待を集めている。

ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)サウスケンジントンは、9月20日から2026年3月22日まで、「Marie Antoinette Style(マリー・アントワネット・スタイル)」を開催する。マリー・アントワネットに特化した展覧会はイギリス初で、華麗な衣装や伝説的ジュエリー、装飾品など250点が展示される。
19歳でフランス王妃に即位したマリー・アントワネットの衣服や髪型は、「同時代のヨーロッパのファッションやデザインに大きな影響を与えました」と、同展のキュレーターであるV&Aのサラ・グラントは指摘する。しかし、歴史上最もファッショナブルな王妃として贅沢な暮らしを送った彼女は、貧富の差を象徴する存在として次第に民衆の反感を買い、最終的にはフランス革命期の1793年に断頭台の露と消えた。
「Marie Antoinette Style」では、豪華な飾りが施された宮廷衣装の断片や、アントワネット自身が履いていた絹のスリッパ、お気に入りの香水の瓶など、当時の優雅な暮らしを彷彿とさせる品の数々が一堂に会する。王妃の私的な離宮だったプチ・トリアノンで使われていた食器類や家具、私物のアクセサリー類などの中には、これまで一度もフランスを離れたことのないものも含まれている。
見どころの1つは、2022年からV&Aが所蔵している20石の大粒ダイヤモンドのネックレスで、1785年の「首飾り事件」と呼ばれる詐欺事件に関連する可能性があるとされるものだ。アントワネットは事件とは無関係だったが、宮廷におけるこの大スキャンダルは彼女に対する悪評を高め、革命の火種の1つとなった。ネックレスは後に闇市場でバラ売りされ、行方は掴めていないという。
また、2018年にサザビーズのオークションで3600万ドル(当時の為替レートで約41億円)もの価格で落札された天然真珠とダイヤモンドのペンダントや、王妃が処刑される前にフランスから密かに持ち出されたとされるリボンを2つ重ねたデザインのダイヤモンドのブローチも展示される。
展覧会では、アントワネットの美的センスを物語る品々を並べるだけでなく、250年もの間、衰えを知らないその影響力についての考察も展開されている。オーディオビジュアルを駆使した没入型展示を活用し、アントワネットの出自や18世紀から現代に至るファッションへの影響を視覚化して伝えるほか、王妃が好んだ香水の香りを再現するインスタレーションもある。

ここで紹介されるのは、ディオールやシャネル、ヴァレンティノ、ヴィヴィアン・ウエストウッドといったデザイナーの作品や、第79回アカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞したソフィア・コッポラ監督の『マリー・アントワネット』(2006)の衣装などだ。V&Aのキュレーター、サラ・グラントは、世界初のファッションインフルエンサーとも言えるアントワネットが残したものについてこう語っている。
「それは、近代初めのセレブリティによるデザイン遺産であり、後世の人々を魅了し続ける女性の物語でもあります。マリー・アントワネットの物語は、それぞれの時代に、それぞれの目的に合わせて語り直され、再利用されてきました。華やかな魅力、豪奢な暮らし、そして悲劇的な最期の組み合わせが人々を酔わせるのは、彼女の時代も今も変わりません」