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ルターゆかりの教会の像から大量の硬貨。戦時下の略奪から財産を守るために隠した?

ルター生誕の地、ドイツ・アイスレーベンにある聖アンドリュー教会で、像の修復中に17世紀の金貨や銀貨を含むコインが大量に入った4つの財布が見つかった。

ドイツ・アイスレーベンにある聖アンドリュー教会。Photo: Wikimedia Commons

1180年に建てられたドイツ・アイスレーベンの聖アンドリュー教会は、1546年にローマ・カトリック教会の腐敗を糾弾する「95ヶ条の論題」を著した宗教改革の中心人物でプロテスタンティズムの創始者、マルティン・ルターが最後の説教を行った場所と言われる。この教会では、2022年に跪く伯爵と伯爵夫人の像の修復作業を行なった際に、像の脚の部分から1600年代のコインが入った4つの財布が見つかっており、その後の調査を経て、2024年11月にLIVE SCIENCEによる報道でこの事実が明らかになった。

今回発見されたコインの一部。Photo: Coutesy of Ulf Dräge
コインが見つかった像。Photo: Coutesy of Ulf Dräge
ドイツ・アイスレーベンにある聖アンドリュー教会。Photo: Wikimedia Commons

調査の結果、財布には金貨や銀貨を含む計816枚のコインが入っていた。そのうち最も価値の高い金貨は紙に包まれ、教会の財宝であることを示すラベルが付けられていた。ドイツのザクセン=アンハルト州立コインキャビネットの学芸員・部門長で貨幣学者のウルフ・ドラーガーによると、ラベルは結婚式、洗礼式、葬儀など特別な儀式を牧師が行った際の謝礼に付けられていたもので、教区民が教会の目立つ席に座るために支払う「椅子代」もそれに該当していたという。これらのコインは、スウェーデン軍がこの地域に頻繁に攻め込んだ三十年戦争(1618-48)中に、教会が財産を守るために隠したものと考えられている。

ドラーガーはこの発見について、「これまで発見されなかったのは奇跡としか言いようがありません」と話す。コインの価値については専門家によるさらなる調査と鑑定が必要だというが、ドラーガーは、「今のところ、莫大な財産であるとしか言いようがありません。少なくとも、職人が1年で稼げる額よりはるかに多いでしょう」と推測する。

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