今度はモネの《Le Printemps》が標的に。「未来の芸術家が描ける“春”はもう来ない」
2月10日、フランスのリヨンにあるボザール美術館で、2人の環境保護活動家がクロード・モネの絵にスープを投げつける事件があった。
1月28日にルーブル美術館の《モナ・リザ》に対するアートアタックを行なった環境活動家団体「Riposte Alimentaire(食の反撃)」が、今度はフランス・リヨンのボザール美術館で抗議行動を行なった。彼らはクロード・モネの1872年の作品《Le Printemps(春)》に向かってルーブルの時と同じくスープを投げつけた。絵画は防護ガラスで保護されていたが、美術館はル・モンド紙に「詳細な検査と修復が必要」と説明している。2人の活動家はすでに破壊行為の容疑で逮捕された。
Riposte Alimentaireのインスタグラムへの投稿では、イロナとソフィーと名乗る2人の活動家が《Le Printemps(春)》にスープをかけ、右手を挙げている姿が映っている。
「私たちが立ち上がらなければ、《Le Printemps(春)》は私たちに残された最後の春となるでしょう。そうなれば、未来の芸術家たちは一体何を描くのでしょう? そして私たちは、春のない世界で何を夢見ればいいというのでしょう?」
また彼らは、「われわれは芸術を愛しています」と断った上で、こう訴えている。
「けれども、焼け野原になった地球で未来の芸術家たちは何を描けばいいというのでしょう。紛争にまみれた世界で、彼らはもはや夢を見ることもできないかもしれません。でも、私たちにはまだ選択肢があります。今すぐ目を覚まし、抵抗しなければならないのです」
リヨン市長のグレゴリー・ドゥーセは、Xへの投稿で今回の抗議運動が起きたことを認めるとともに遺憾の意を表明し、これによって美術館の一部を閉鎖せざるを得なくなったこと、それに対応したスタッフを労った。と同時に、こう付け加えた。
「しかし、気候変動という危機に対し大きな不安をいただくのは当然といえます。私たちは断固とした行動で、それに取り組んでいく所存です」
Riposte Alimentaireは、エクスティンクション・レベリオンやジャスト・ストップ・オイルなどこれまでも度々アートアタックを行なってきた活動団体からなる「A22ネットワーク」に属するフランスの活動家グループだ。貧困層に食糧を届ける仕組みづくりや環境負荷の少ない農業のあり方、農業従事者の雇用や権利の保護を訴える活動を展開している。
モネの作品に対する抗議運動としては、2022年10月、当時ドイツ・バルベリーニ美術館に貸し出されていた《積みわら》(1890)に、レッツェ・ゼネラチオン(Letzte Generation、ドイツ語で「最後の世代」の意味)というドイツの環境活動団体のメンバーがマッシュポテトを投げつけている。同作品は2019年に、ARTnewsのトップ200コレクターに名を連ねるハッソ・プラットナーがオークションで1億1070万ドル(当時の為替レートで約121億円)で落札したものだ。
さらに昨年6月には、ストックホルムの国立美術館に展示されていたモネの《ジヴェルニーのモネの庭》(1900)に2人の環境活動家が赤いペンキを塗り、手を接着剤で貼り付けた。この作品は、パリのオルセー美術館が1983年に収蔵したもので、同館の「庭─芸術と自然の600年」展のために貸し出されていた。
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