ARTnewsJAPAN

アンセル・アダムスの管理団体がアドビに激怒。「自社の規約違反の監視を他者に押し付けるな」

20世紀アメリカを代表する風景写真家、アンセル・アダムス(1902-1984)の作品を管理するアンセル・アダムス・トラストは、Adobe Stockがアダムスの作品に極似した生成AIの画像を販売しているとSNS上で訴えた。

アンセル・アダムス《The Tetons and the Snake River 》(1942) Photo: Wikimedia Commons

アメリカ西部の広大な森林や山々を撮影したモノクロ写真で知られる20世紀の巨匠、アンセル・アダムス。その作品を管理するアンセル・アダムス・トラストは、Adobe Stockがアダムスの作品に極似した生成AIの画像を販売しているとして、同社に対して昨年から度々指摘してきた。

アメリカのソフトウェア会社、アドビが運営するストックフォトサイトAdobe Stockでは、「Ansel Adams-Style Photography - AI-Generated」と銘打ち、アダムスの作品によく似た生成AIの画像を月額79.99ドル(約1万2000円)の「拡張ライセンス」プランで販売していた。それらの画像の1枚には、 谷に流れ込むような雲と、穏やかな川の流れが描かれたものがある。これはアダムスが1930年代に撮影した作品に極似しているが、ディテールに富んだアダムスの写真とは異なり、画像の山々や木々はべた塗りのように黒く、雲は平坦で明らかに写真ではないと分かる。

これらの作品は、Adobe Stockの利用規約にも違反している。規約には、 「アーティストの名前を含むプロンプト(ユーザーがコンピュータに入力する命令や指示)、またはアーティストのコピーを意図したプロンプトでAIが生成した写真をアップロードすることは禁止されている」とあるのだ。

Adobe Stockが提供する「Ansel Adams-Style Photography - AI-Generated」について、5月31日、アダムスの作品を管理するアンセル・アダムス・トラストはスレッドに、「(アドビの)この振る舞いは、公式に我々の神経を逆なでしています」と、Adobe Stockの商品提供画面と共に投稿。2800以上の「いいね!」が寄せられた。

翌日、この投稿にアドビは、「私たちの生成AIのコンテンツポリシーに反するものですので、削除しました。ご指摘ありがとうございます」 と返信し、コンテンツを削除した。アドビ側の対処にアンセル・アダムス・トラストは満足したかと言うと、そうではない。トラストはこう返信した。

「@adobeの対処には感謝しているが、2023年8月から何度も直接指摘の連絡を入れていました。もし、この件について真剣に取り組む気持ちがあるのなら、倫理的で責任あるAIへのコミットメントを表明する一方で、クリエイティブ・コミュニティへの敬意も示してください。 私たちのような苦情に対して積極的に対応するのはもちろんのこと、あなたのプラットフォーム上の規約違反の監視を、個々のアーティストやアーティストの管理団体に負わせるのをやめてください。あなたのものではないリソースを費やすのはもうやめましょう」

US版ARTnewsはアドビにコメントを求めたが、返事は来ていない。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい