中国人アーティストの盗作スキャンダルが遂に決着。損害賠償1億円の支払いが命じられる
中国人アーティストのイエ・ヨンチンが、ベルギー人アーティストの作品を盗用したとして、損害賠償金およそ1億円の支払いが命じられた。イエの作品はコレクターにも人気があり、ビル・ゲイツやルパート・マードックといった実業家もコレクションしていたという。
中国人アーティストのイエ・ヨンチンがベルギー人アーティスト、クリスチャン・シルヴェインの作品を盗用したとして、中国の控訴裁判所は、イエに65万ユーロ(約1億580万円)の損害賠償金の支払いと、判決から10日以内に主要中国紙で謝罪文を掲載するよう命じた。この判決に従わない場合、イエは収監される可能性もあるという。
この法廷闘争は、2019年にベルギーのヘット・ニュースブラッド紙でイエとシルヴェインの作品の類似性が報じられて以来5年間に渡る。そのようやくの終結に、74歳となったシルヴェインは安堵した様子を見せた。裁判で得た賠償金は、弁護士費用や協力者への支払いに充てられるという。
イエは中国の美術大学の教授で著名なアーティストだった。だが盗作疑惑が浮上してからは学生からの抗議や美術専門家からの批判が巻き起こり、彼の評判は大きく傷ついた。2018年からは展覧会を開催しておらず、大学の教職も解かれ、複数の美術館からは作品が撤去されている。
また、彼はアート市場でもトップを走っていた。作品の販売で1500万ドル(約23億円)を超える財産を築き、オークションで60万ドル(約9500万円)以上の値が付くこともあった。彼の顧客は、ビル・ゲイツやルパート・マードックといった著名人が名を連ねている。盗作疑惑が暴露された当初は、中国の美術界に大きな衝撃が走り、イエの作品をシルヴェインの作品に置き換える美術館もあったという。また、美術評論家のジャン・ファンチョウはイエの行為を「中国の現代美術シーンを侮辱するもの」と非難した。
今回の裁判は、中国の裁判所において海外のアーティストが中国人アーティストを相手取って盗作訴訟を起こし、勝訴した初めての事例となった。裁判の結果についてシルヴェインは次のように語る。
「今回の判決によって、中国の人々が他人の作品を盗作する前に思いとどまるようになるでしょう」(翻訳:編集部)
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