傑作《エッケ・ホモ》の下から男性の肖像画現る! 2作品の相関関係は? 男性の素性は? 謎の解明に期待
ティツィアーノとして知られるイタリア・ルネサンス期の画家、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(1490-1576)の油彩画を科学分析したところ、下層から男性の肖像画が現れた。
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ティツィアーノとして知られるイタリア・ルネサンス期の画家、ティツィアーノ・ヴェチェッリオの油彩画《エッケ・ホモ》(1570-75)を研究者たちが調査したところ、層の下から男性の肖像画が現れた。
《エッケ・ホモ》はラテン語で「この人を見よ」という意味。磔刑を前に、キリストを侮辱する群衆に対してピラトが発した言葉であり、このシーンは9世紀頃から芸術作品の定番の題材として多くの芸術家に描かれてきた。特に、ウィーンの美術史美術館に所蔵されているティツィアーノの同作は傑作として知られており、縛られ茨の冠をつけたイエス・キリストが、ローマの役人ポンティウス・ピラトの傍らに立つ様子が描かれている。
同作がリマソル市立芸術センターでの展覧会で展示されるにあたり、キプロス研究所のアンドレアス・ピッタス・アート特性研究所(APAC)が素材と保存状態の記録を任された。彼らが修復に備えて念のため顕微鏡で観察したところ、絵画表面のひび割れから異なる色の顔料を発見したという。
APACのニコラス・バキルツィス所長は、発見の経緯についてアートネットに「まるでパズルを解くような作業でした。絵画のひび割れを顕微鏡で観察しながらキャンバスの層構造を記録し、《エッケ・ホモ》の構図の下に異なる顔料が存在することを検出しました」と語った。
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絵画の下層からは、口ひげを生やした男性が羽ペンを持ち、紙の束の傍らに立つ姿が現れた。男性の素性が分からないため、研究チームはこの作品を《正体不明の男性の肖像》と名付けた。
ティツィアーノは男性の肖像を逆さまにして、その上から《エッケ・ホモ》を描いた。専門家らは、下に描いた男性像の造形が同作に影響を与えていると考えている。バキルツィスは、「例えば男性の顎のラインの一部が、キリストの手を縛る縄のラインとリンクしていることが分かりました。そのほか肖像画に描かれた背景や部屋の細部も、《エッケ・ホモ》の構図の描写に活用されています」と説明する。研究者たちは、この行動は「経験豊富で、自信に満ちた芸術家であること」の表れと考えている。
描かれた男性の特定や制作年代の確定には、さらなる分析が必要だ。《エッケ・ホモ》の研究成果が展示されているリマソル市立芸術センターでの展覧会は3月10日まで開催されている。(翻訳:編集部)
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