ウータン・クランファンはオーストラリアへ急げ！ 世界にたった1枚のアートアルバムが豪美術館で公開
オーストラリア・タスマニアの美術館、ミュージアム・オブ・オールド・アンド・ニューで開催される展示「Namedropping」において、この世に1枚しか存在しないウータン・クランのアルバムが期間限定で公開される。2103年まで商業用にリリースできないという法的条件が設けられている「美術品」として作られたこのアルバムの収録曲は、毎日13:00と16:00に再生されるという。
ウータン・クランが秘密裏にレコーディングした伝説的アルバム『Once Upon a Time in Shaolin』がオーストラリア・タスマニアのミュージアム・オブ・オールド・アンド・ニュー（Mona）で6月15〜24日の間に一般公開される。これまで販売されたなかで最も高価なアルバムは、配信サービスによって手軽に聴けるようになった音楽の価値を上げるために、美術品として扱われるよう作られた。
1992年にニューヨーク州スタテンアイランドで結成されたウータン・クランは、暴力的で性的な歌詞で知られ、アフリカ系アメリカ人が暮らしのなかで感じたトラウマを軽妙に表現している。
『Once Upon a Time in Shaolin』のレコーディングは2006〜2013年にかけてモロッコのマラケシュで行われた。レコーディングには9人のメンバーが参加しており、シェールとゲーム・オブ・スローンズに出演したカリス・ファン・ハウテンといったゲストもフィーチャリングされている。収録された31曲を聴くには、1枚だけ作られたCDを再生する以外に方法はない。
ニッケル製のきらびやかな手彫りの箱と革装の歌詞カード、そして鑑定書が付属するこのアルバムの所有者には、収録曲を2103年まで商業的にリリースできないという法的条件が課せられている。それが、Monaで開催されている展覧会「Namedropping」で、抜粋された30分間のサンプルを毎日13:00と16:00に聴くことができるというのだ。
Monaの学芸課のディレクターを務めるジャロッド・ローリンズはBBCの取材に対して次のように語る。
「地球上には、物質的な性質を超越した神秘性が宿っている物体が存在します。『Once Upon a Time in Shaolin』はただ聴くためだけに存在するアルバムではないので、絶対に今回の展覧会に取り入れたいと考えていました」
『Once Upon a Time in Shaolin』は、2015年にアルバムが売りに出された際に、購入希望者やメディアを含むほんの一握りの人だけに向けて部分的に聴くことができた。最終的に本作を手にしたのは実業家のマーティン・シュクレリで、200万ドル（現在の為替で約3億1420万円）で落札した。しかし、2016年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプが当選したことを祝し、シュクレリはアルバムの一部をYouTubeに投稿。これにより2018年、シュクレリに有罪判決が下され、資産が差し押さえられたことから、『Once Upon a Time in Shaolin』は米司法省に引き渡された。その後、デジタルアート・コレクティブのPleasrに売却されている。（翻訳：編集部）
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