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自称「バンクシーの友人」がバンクシー作品を盗み、2年の実刑判決。「資本主義システムの偽善を糾弾」

バンクシーが2018年にパリ・ポンピドゥー・センターの駐車場を示す看板の裏に制作した作品を盗んだ男の裁判がフランスの裁判所で行われ、6月19日、被告に執行猶予付き2年の実刑判決と600万円以上の罰金や損害賠償金の支払いが命じられた。

2018年、ポンピドゥー・センターの駐車場を示す看板の裏に描かれたバンクシー作品。Photo: Aurelien Morissard / IP3 / Getty Images

バンクシーは2018年6月、パリのポンピドゥー・センターの駐車場を示す看板の裏に、カッターナイフを持った覆面のネズミの作品を制作し、インスタグラムで発表した。インスタグラムによると、同作品は1968年に起こったシャルル・ド=ゴール体制に対する広範な労働者・市民による反対運動「五月革命」から50年になるのを記念したものだという。バンクシーは虐げられた人々の象徴としてネズミのイメージを頻繁に用いている。だが、2019年9月にこの作品は盗まれた。

その後、フランス警察は2020年に2人の男を拘留した。そのうちの1人である38歳のミュージシャン、メジディ・Rは、看板の作品部分をアングルグラインダーと呼ばれる電動工具で剥がしたことを認めた。供述で彼はバンクシーの友人だと名乗り、作品を回収するために「チーム」とともに呼ばれて、ほかの仲間は作品とともにイギリスへ戻ったと語った。

ナショナル・ニュースが報じたところによると、メジディ・Rはバンクシーの目的について、「何の価値もない」ストリートアートで他の人たちが金儲けをするのを止めさせ、「美術作品の価値を決める資本主義システムの偽善を糾弾する」ためだと話した。しかし、検察によると、バンクシーの代理人はこれらの主張を否定しているという。

6月19日、フランスの裁判所はメジディ・Rに対して執行猶予付き2年の実刑判決を下した。そして、3万2000ドル(約511万円)の罰金の支払いと、作品の保管者と見なされたポンピドゥー・センターに対して6950ドル(約111万円)以上の損害賠償金の支払いを命じた。

この判決に対してメジディRは、美術品を盗んだのではなく、「看板の金属を劣化させた」だけだと主張している。(翻訳:編集部)

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