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アート・バーゼルとUBSによる2021年アートマーケット調査中間報告:市場が回復した上半期、ギャラリーの雇用も持ち直す

アートエコノミストのクレア・マッキャンドルー氏が執筆し、アート・バーゼルとUBSが本日発表した2021年の中間調査報告によると、2020年のコロナ禍でギャラリーが見舞われた売り上げや雇用の減少は、2021年の上半期には改善している。

アート・バーゼル香港での展示風景(2021年5月) Courtesy LGDR

同報告書では、700の国際的なギャラリーと、米国、英国、香港、ドイツ、スイスの富裕層アートコレクター500人を対象に調査を実施。その結果、2020年に失われたギャラリーの雇用は2021年半ばまでにほぼ回復し、全体の売り上げは昨年比で10%増になった。

「危機的状況でも美術品の売り上げは比較的堅調に推移してきたが、ギャラリーの最大の悩みは雇用をめぐる問題だ」。報告書に添えられたステートメントで、マッキャンドルー氏はこのように述べている。

報告書によると、2020年はギャラリーの23%が人員削減を余儀なくされた。一方、2021年上半期は25%のギャラリーが新たに従業員を採用する一方、13%が引き続き雇用を抑制している。

調査対象となったギャラリーのうち半数が、2021年上半期の売上高は対前年同期比で「増えた」と回答。45%が「減った」、5%弱が「同水準だった」としている。

ギャラリーの規模別に詳細に見ていくと、大手では状況が改善しているが、中・小ギャラリーは売上高をコロナ前の水準に戻すのに苦戦していることが分かる。

年商1000万ドル以上のギャラリーの売上高は前年同期比で21%増加。年商50万ドルから100万ドルの中規模ギャラリーは平均で3%減少し、年商25万ドル未満の小規模ギャラリーは前年同期の業績をわずかに下回った。

同報告書が示すもう一つの現象は、アジアのアートマーケットの台頭だ。特にコロナ禍の拡大以降、これが顕著になっている。2021年上半期に最も売り上げを伸ばしたのはアジアのギャラリーで、18%増。それに対し、最も売り上げを減らしたのはヨーロッパのギャラリーで、平均7%の減少となった。

マッキャンドルー氏によると、オンライン販売の急速な拡大も続いている。アートフェアが主催するオンラインビューイングルームでの販売を含め、ギャラリーの売り上げ全体の37%をオンライン販売が占めた。また、調査対象となったコレクターの半数近くが1年以内に映像作品を含むデジタルアートを購入したいと回答している。

デジタルアートに最もお金をかけているのはミレニアル世代で、2021年上半期の平均購入額は2万ドルだった。とはいえ、ギャラリーの売り上げ全体に占めるデジタルアートの割合は依然として小さく、0.5%に満たないという。

コロナによる世界的な危機が続くなかでも、超富裕層のアートへの投資は衰えていない。実際、調査対象となったコレクターによる支出の中央値は平均で42%増え、24万2000ドルに達した。

デジタルアートと同様に、この上昇に大きく貢献しているのはミレニアル世代のコレクターだ。彼らの平均支出額は37万8000ドルと世代別では最も高く、年齢が上の世代の約3倍となっている。(翻訳:野澤朋代)

※本記事は、米国版ARTnewsに2021年9月9日に掲載されました。元記事はこちら

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