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アートを作ったAIは著作権者になり得るか? 米国著作権局が裁定を下す

2018年、Imagination Engines, Inc.(イマジネーション・エンジンズ・インク)CEOのスティーブン・ターラー博士は、自らが発明した人工知能、クリエイティビティ・マシンが作ったアート作品の著作権を登録しようと、米国著作権局の審査委員会に申請書を送付。しかし申請は却下され、博士は不服の申し立てを行った。

スティーブン・セイラーまたはクリエイティビティ・マシンによる「A Recent Entrance to Paradise(最近の天国への入国)」 Review Board
スティーブン・ターラーまたはクリエイティビティ・マシンによる「A Recent Entrance to Paradise(最近の天国への入国)」 Review Board

2022年2月中旬、審査委員会は著作権を保有できるのは人間だけだとして、AIに著作権を与えることを再び拒否している。

問題の作品は、ツタに覆われたアーチ橋の下を抜ける線路を描いた二次元画像で、「A Recent Entrance to Paradise(最近の天国への入国)」と題されている。1980年代から人工知能の実験を続けてきたターラー博士は、プログラミングによって作られた躁状態とうつ状態でクリエイティビティ・マシンの創造的な表現がどう変化するかを研究している。

「A Recent Entrance to Paradise」は、臨死体験をテーマにクリエイティビティ・マシンが制作したシリーズの一部。裁判資料によると、博士はこの作品を、「マシン上のコンピューターアルゴリズムによって自律的に作成されたもの」と説明している。

これについて著作権局の審査委員会は、人間の精神によって生み出されたものだけが著作物として認められるという、著作権法の基本に反するとした。「ターラー氏は、作品が人間によって作られたものだという証拠を提出するか、100年にわたって続いてきた著作権法から逸脱することを著作権局に納得させる必要がある。彼はそのどちらも行っていない」と、委員会の決定について説明している。

ターラー博士は、自分がこの作品の著作者として登録されることを求めていない。「著作物は人間が生み出したものでなければならないという著作権局の要件は違憲で、判例法にも裏付けられていない」というのが、彼の主張だ。

過去には、人間以外の動物や、神的存在(霊的な力によって本が書かれたと主張)の著作権が否定された例もある。今回の裁判資料には次のように書かれている。「裁判所はこれまで通り、人間の精神が創造的表現に結びついていることが著作権保護の前提だと明言する」(翻訳:野澤朋代)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年2月22日に掲載されました。元記事はこちら

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