今週末に見たいアートイベントTOP5: ヒルマ・アフ・クリントのアジア初大回顧展、ダムタイプらと手掛けた南琢也の仕事を紹介

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

ヒルマ・アフ・クリント展(東京国立近代美術館)より、展示風景。撮影:三吉史高

1. 雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館(ワタリウム美術館)

会場風景 溶けた林檎 2004-2024(個人蔵/弘前れんが倉庫美術館蔵) Photo:Shuji Goto
最新VR 作品のためのドローイング 2024 年
胡蝶の正夢 2000年 FRPにテンペラと油彩の混合技法、台座 Photo:Yasunori Tanioka
Apple, 2023 年 林檎材に油絵具

「この場所」への注目を促す新作VR作品は必見

現在、山梨県在住の雨宮庸介による、東京の美術館での初めての個展。ワタリウム美術館を舞台に制作された最新VR作品を中心とし、2000年初頭の最初期作や《溶けたりんごの彫刻》、《石巻13分》の記録映像、《1300年持ち歩かれた、なんでもない石》のペーパーなど、雨宮の代表作を一堂に体験できる内容となっている。

展覧会の開催直前に同館の中で撮影されたVR作品は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着して体験する。通常「ここではないどこか」に行くためのHMDだが、あえて「どこかではないここ」に再注目させるためのデバイスとして定義し直した。2024年春に山梨県立美術館からはじまり、大地の芸術祭、Kyoto Interchangeなどで発表されたVR作品への取り組みの総決算となる注目の新作だ。雨宮にとって、大学時代からの馴染みの場所であるワタリウム美術館での個展が、アーティストにとってどのような影響や化学反応をもたらしたのか、ぜひ体験してほしい。

雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館
会期:2024年12月21日(土)~2025年3月30日(日)
場所:ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3-7-6)
時間:11:00~19:00
休館日:月曜


2. takuya minami w/(京都 ddd ギャラリー)

Dumb Type + Ryuichi Sakamoto | Playback 2022 アートボックスデザイン  w/ Ryuichi Sakamoto, Shiro Takatani & Norika Sora 2023 Photo: Shiro Takatani
Ryoji Ikeda | fragments vol.1 w/ Ryoji Ikeda ポストカードセット デザイン 2022 Design Team: Takeshi Asano, Keigo Shiotani © Ryoji Ikeda Photo: Takeshi Asano
Ryoji Ikeda | music for percussion w/ Ryoji Ikeda CD+ブックレット デザイン 2018 Design Team: Takeshi Asano, Keigo Shiotani © Ryoji Ikeda Photo: Takeshi Asano
Dumb Type | DUMB TYPE 1984 2019  書籍デザイン w/ Dumb Type 2019 Photo:Takeshi Asano

ダムタイプらと「共に」手掛けた南琢也の仕事を紹介

グラフィックデザイナーとして広告物や出版物、CDパッケージデザインを手掛けながら、パフォーマンス等の制作メンバーとしても活躍する南琢也の個展。南のキャリアの中で重要なのは、ダムタイプとの仕事だろう。南は大学入学当初、何も知らない状態でダムタイプに出会い、彼らとの仕事を通して自らのデザインを「アーティストとの協働作業」と位置づける制作姿勢を培ってきた。

タイトルの「w/」には「with(共に)」が示唆されており、ダムタイプを始め、その活動を通して交流が始まった池田亮司、坂本龍一、高谷史郎らのために制作された、南が自選した作品で構成される。ダムタイプの作品制作は、メンバーが個々の役割の垣根を越えて対話を繰り返し、皆で作り上げていく手法で知られている。アーティストたちと対話し、その意思に寄り添い、精神性をも表現する南の作品の持つ、熱を秘めた静謐に触れる貴重な機会となるだろう。

京都dddギャラリー第245回企画展  takuya minami w/
会期:1月23日(木)~4月2日(水)
場所:京都 ddd ギャラリー(京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620 COCON烏丸3F)
時間: 11:00~19:00(土日祝は18:00まで)
休館日:月曜(祝休の場合はその翌日、土日にあたる場合は開館)


3. 玉山拓郎  ̶P̶A̶S̶T̶ ̶W̶O̶R̶K̶S̶ ̶  FLOORS(GASBON METABOLISM)

Static Lights 展示風景、GASBON METABOLISM、山梨、2025 Photo courtesy: GASBON METABOLISM
Museum Static Lights 展示風景、GASBON METABOLISM、山梨、2025 Photo courtesy: GASBON METABOLISM
Spaghetti with 2 Plates (Dirty Palace Revisited) 展示風景、GASBON METABOLISM、山梨、2025 Photo courtesy: GASBON METABOLISM

広大な空間で玉山の作品を体感

1990年岐阜県生まれのアーティスト玉山拓郎は、身近にあるイメージを参照し、 生み出された家具や日用品のようなオブジェが置かれた室内空間と、 鮮やかな照明や音響を組み合わせたインスタレーションを制作。最小限の方法で空間を異化、あるいは自然の理を強調することで、鑑賞者の身体感覚や知覚へと揺さぶりをかける作品で知られている。

豊田市美術館で現在開催中の個展「玉山拓郎:FLOOR」(5月18日まで)と並行する本展は、これまでに発表された作品を、床面積1000平方メートルを誇るGASBON METABOLISMの空間内で再構成することで新たな作品体験を生み出す。広大な空間で玉山の作品世界を堪能できるまたとない機会だ。

玉山拓郎P̶A̶S̶T̶ ̶W̶O̶R̶K̶S̶ ̶FLOORS
会期:2月28日(金)~ 5月5日(月)
場所:GASBON METABOLISM(山梨県北杜市明野町浅尾新田12)
時間:11:00 ~17:00
休館日:火~木(要予約)
協力:ANOMALY


4. ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ(アーティゾン美術館)

左:《「ダダ・ヘッド」とゾフィー・トイバー》1920年、アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト 撮影:ニック・アルフ 右:《「臍=単眼鏡」とジャン・アルプ》1926年頃、アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト ⓒ VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4762
ゾフィー・トイバー=アルプ《オーベット200(ストラスブールのオーベットのバーの天井デザイン》1927年、アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト
ジャン・アルプ(ゾフィー・トイバー=アルプの作品に基づく)《無題(頭部)》1950年代、アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト ⓒ VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4772
ジャン・アルプ《7 アルパーデン:アルプ・アルバム(『メルツ』第5号)Ⅰ口髭=帽子》1923年、アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルトⓒ VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4772
ゾフィー・トイバー=アルプ《抽象的なモティーフによる構成(手帳カバー)》1917-18 年頃、アールガウ州立美術館、アーラウ(個人より寄託)

20世紀の前衛美術シーンで活躍したアーティスト・カップルの創作に焦点

テキスタイル・デザイナーとしてキャリアを始め、緻密な幾何学的形態による構成を、絵画や室内空間へと領域を横断しながら追求したゾフィー・トイバー=アルプ(1889‒1943)と、その夫であり、詩作をはじめ、偶然的に生まれる形態に基づいてコラージュやレリーフ、彫刻を制作したジャン・アルプ(1886‒1966)。本展は、20世紀前半を代表するアーティスト・カップルをめぐり、個々の創作活動を紹介するとともに、両者がそれぞれの制作に及ぼした影響や協働制作の試みに目を向ける。

ドイツとフランスのアルプ財団をはじめとする国外のコレクションから、トイバー=アルプの作品45点、アルプの作品36点、そして多様な様態からなる両者のコラボレーション作品7点の計88点が展示される。本展では、夫婦の関係にあった2人を取り上げることで、カップルというパートナーシップにおける創作の可能性や、この時期の女性アーティストの立場、芸術ジャンルのヒエラルキーに関する考え方など、20世紀の美術を考察する上で普遍的なテーマを映し出している。

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ
会期:3月1日(土)~6月1日(日)
場所:アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)
時間:10:00~18:00(金曜は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(5月5日は開館)、5月7日


5. ヒルマ・アフ・クリント展(東京国立近代美術館)

撮影:三吉史高
ヒルマ・アフ・クリント 《10の最大物、グループIV、No. 3、青年期》 1907年 テンペラ・紙(キャン バスに貼付) 321×240cm ヒルマ・アフ・クリント財団  By courtesy of The Hilma af Klint Foundation
ヒルマ・アフ・クリント 《10の最大物、グループIV、No. 7、成人期》 1907年 テンペラ・紙(キャン バスに貼付) 315×235cm ヒルマ・アフ・クリント財団  By courtesy of The Hilma af Klint Foundation
ヒルマ・アフ・クリント 《祭壇画、グループX、No. 1》 1915年 油彩、箔・キャンバス 237.5×179.5cm  ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation

代表作など約140点が集結。アジア初の大回顧展

20世紀初頭、ワシリー・カンディンスキーやピート・モンドリアンなど同時代のアーティストに先駆け、抽象絵画を創案した画家として近年再評価が高まるヒルマ・アフ・クリント(1862-1944)のアジア初の大回顧展。スウェーデンに生まれたアフ・クリントは、王立芸術アカデミーで正統的な美術教育を受けた後、肖像画や風景画で評価を得ながらも、神秘主義などの秘教思想やスピリチュアリズムに傾倒し、交霊術の体験などを通して、アカデミックな絵画とはまったく異なる抽象表現を生み出した。

本展は、代表的作品群「神殿のための絵画」を中心に、初来日の作品約140点を通して、ヒルマ・アフ・クリントの画業の全容を紹介する。展覧会のハイライトは、高さ3メートルを超え、人生の四つの段階(幼年期、青年期、成人期、老年期)を描いた10点組の大作《10の最大物》(1907)。画面からあふれ出てくるようなパステルカラーの色彩や多様な抽象的形象、そして圧倒的なスケールは、観る者を一瞬で引き込み、まるで異空間を漂うかのような唯一無二の体験を生み出す。

ヒルマ・アフ・クリント展
会期:3月4日(火)~6月15日(日)
場所:東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)
時間:10:00~17:00(金土は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(3月31日、5月5日を除く)、5月7日

あわせて読みたい