スコットランドで魔女狩り犠牲者を追悼するタータン・チェックが認定。「悲劇の歴史を風化させない」

スコットランドで行われた魔女狩りの犠牲者を追悼するための新しいタータン・チェックが作られ、このほど正式に認定された。

このほどスコットランド・タータン登記所に認定された魔女狩り犠牲者追悼のタータン。Photo: instagram/@witches.of.scotland

16世紀から18世紀にかけてスコットランドで行われた、魔女狩りの犠牲者に捧げるタータン(日本ではタータン・チェックとも呼ばれる)が作られ、2025年2月に正式認定された。Smithsonian Magazineが伝えた。

スコットランドの魔女狩りは1563年から1736年の間、魔女法によって行われた。同法では魔女や魔術の定義についてはあいまいで、体にあるほくろ、いぼ、あざなどは「魔女突き」と呼ばれ、魔女の証拠とされた。スコットランド全土で、人々は友人、隣人、親戚を告発し、告発された人々は自白を引き出すために拷問を加えられたり、睡眠を奪われたりした。そうして魔女として有罪判決を受けた人々のほとんどは絞首刑にされ、その後焼かれたと伝えられている。

エジンバラ大学の「スコットランドの魔女に関する調査」によると、魔女法により、2500人のスコットランド人が処刑され、そのうち85%が女性であったと推定されている。この法律による最後の処刑は1727年に行われ、1736年にこの法律は廃止された。

こうした魔女狩りの犠牲者への恩赦と謝罪を国に求める動きは今も続いている。2020年にクレア・ミッチェルとゾーイ・ヴェンディトッツィによって設立された団体「スコットランドの魔女たち」は、22年にスコットランド首相ニコラ・スタージョンとスコットランド教会による公式謝罪を勝ち取った。同団体は、次は魔女法の犠牲者を追悼する記念碑を建てたいと考えていたが建設場所を決められず、費用の工面にも苦労していた。

そんな中、ミッチェルとヴェンディトッツィはV&Aダンディーで開催された「タータン」展に足を運び、「魔女狩りの犠牲者を追悼するタータン」を作ることを思いついた。

タータンは、スコットランドのチェック柄の伝統織物だ。柄は、同国のタータン登記所が管理しており、誰でも登録することができる。現在は王室や国、家族、会社単位のものなど7000種類以上が存在するという。

ミッチェルとヴェンディトッツィは、スコットランド高地のエバントン村で織物工場「プリックリー・シスル」を経営するクレア・キャンベルと手を組んだ。彼女たちが作り上げた新しいタータンは、配色、織り方など至る所に魔女裁判の記憶が散りばめられたものとなった。

使用された黒とグレーの色は「暗黒時代と、魔女と決めつけられ焼かれた人々の灰」を表している。赤は「犠牲者の血」を、ピンクは「当時も今も法律の書類を縛るのに使われているテープ」を象徴している。

タータンの糸の数にも意味がある。大きな黒い四角は173本の糸でできており、これは法律が施行されていた年数だ。タータンの細い線は15本または17本の糸でできており、同法が施行された1563年と廃止された1736年の数字をそれぞれバラバラにして足した数を表している。

タータンをデザインしたことについて、キャンベルはヘラルド紙に、「魔女狩りという行為がどれほど長く存在し、多くの人々にとってどのような意味を持ち、その間、どれほどの不正義があったかを伝えたいと考えました」と話し、次のように付け加えた。

「私は自分の意見をはっきりと言う人間なので、魔女狩りの標的になったと確信しています。だからこそ、このタータンで記録することに意義を感じるのです」

ミッチェルとヴェンディトッツィは、今年の5月にもこのタータンの布の製造を開始し、製品を広く売り出したいと考えている。売り上げの一部は慈善団体に寄付する予定だ。

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