ドラクロワがライオンを描いた油彩習作が150年ぶりに個人宅で発見。3月末にオークションへ
150年間フランスの個人宅に飾られていたライオンの絵が、ウジェーヌ・ドラクロワによる油彩の習作であることが分かった。3月28日にパリでオークションに出品される。

《民衆を導く自由の女神》(1830)や《アルジェの女たち》(1834)などで知られる19世紀フランスロマン主義の代表作家、ウジェーヌ・ドラクロワ。この巨匠がライオンを描いた習作が昨年末フランスの個人宅で見つかり、ドラクロワによる油彩の習作であることが今週正式に発表された。
高さ約61cm、横幅約50cmのこの作品は、3月28日にパリの競売所でオークションにかけられる予定で、予想落札額は20〜30万ユーロ(約3200万〜4800万円)とされている。
発表を行ったオークション会社のダゲール・ヴァル・ド・ロワールによると、トゥーレーヌ在住の所有者にドラクロワの絵だとの確信はなかったという。同社のマロ・ドゥ・リュサックは、絵は150年にわたり所有者宅の居間に飾られていたとし、AFP通信にこう語った。
「部屋に入った私の目は、絵の魅力に釘付けになりました。それはとても感動的でした。ドラクロワの作品は美術館ではよく目にすると思いますが、個人の手に渡ることはほとんどありません」
所有者はこの習作がドラクロワのものかもしれないと認識はしていたが、裏付けがなかったため半信半疑だったいう。ドゥ・リュサックがドラクロワだと確信したのは、調査中に新たな発見があったからだ。それについて彼は、仏リベラシオン紙にこう説明している。
「調査で2つの文書が見つかりました。1つはドラクロワ研究の専門家であるリー・ジョンソンが1980年代に書いた、この作品が本物であることを証明するもの。もう1つは鑑定書です」
2006年に死去した美術史家のジョンソンはドラクロワ研究の第一人者で、80年代に数多くの作品を収録した一連の研究書を出版している。
なお、ドラクロワのこれまでのオークション記録は、2018年にペギー&デイヴィッド・ロックフェラー夫妻のコレクションから出品された1862年作の《Tigre jouant avec une tortue(カメと戯れるトラ)》(約45cm x 62cm)で、落札額は987万5000ドル(当時の為替レートで約10億9000万円)だった。それに比べると、今回の予想価格はかなり控えめだ。
ちなみに、ド・リュサックが有名画家の作品を見つけたのは、これが初めてではない。2023年にもフランスの個人宅で、ピーテル・ブリューゲル(子)の絵を発見している。所有者は複製画だと思っていたが、実は本物であることが判明した。(翻訳:石井佳子)
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