テートが従業員40名のレイオフを実施。コロナ禍から続く赤字を解消し、「収益源の創出を優先」

イギリス国内に複数の文化施設を展開するテートグループが、コロナ禍から続いていた赤字の解消と、将来展開するプログラムの拡充を目的に従業員の解雇を実施した。

テート・モダンの外観。Photo; Getty Images/iStockphoto
テート・モダンの外観。Photo; Getty Images/iStockphoto

世界的な不況が予測され、美術館やギャラリーが運営コストの削減を迫られているなか、イギリス国内に複数の文化施設を展開するテートは、人員を大幅削減することを発表した。

フィナンシャル・タイムズ紙によると、希望退職者を募ったり新規採用を凍結することで、グループの従業員の約7%にあたる約40名の人員が削減される予定だという。同紙の取材に対しテートの広報担当者は、「今回の人員削減によって、テートをはじめとする多くの美術館が新型コロナウイルスのパンデミック以来抱えてきた赤字を解消できることでしょう」と語り、こう続ける。

「これにより当グループは、画期的なプログラムの継続的な提供、さまざまな人々とのコレクションの構築と共有、そして、次世代の才能に刺激を与えることが可能になると考えています」

また、テートグループのディレクターで、イギリスの美術館評議会「National Museum Director's Council」の議長も務めるマリア・バルショウは、フィナンシャル・タイムズ紙の取材に対して、経営陣は「自主的な手段により慎重に人員削減を実施」し、「収益源の創出を優先した」と説明している。

テートは、ロンドンテート・ブリテンテート・モダン、テート・リバプール、テート・セント・アイヴスの4つの美術館を展開している。現在はグループ全体で複数の資金調達プロジェクトが進められており、集められた資金はテート・リバプールの大規模拡張計画などに使われる予定だ。また、グループに最近加わったテート・セント・アイヴスは現在、イギリス指定建造物2級(保護が必要な特別な建造物)に認定されている、かつてバーバラ・ヘップワースのスタジオだったパレ・ド・ダンスの修復を実施している。

美術機関の人員削減は、アメリカの主要な美術館でも行われている。ニューヨークのグッゲンハイム美術館は、パンデミック後の財政安定化という継続的な課題を理由に、全館で20人(全従業員の7%)の解雇を2月末に実施。その数日前には、ブルックリン美術館が14人の組合員を含む20人のスタッフを解雇しているが、同館の従業員が加盟している労働組合、全米自動車労働組合(UAW)の「Local 2110」の代表者から法的措置が取られている。(翻訳:編集部)

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