古代の墓地がなぜ病気治癒のパワースポットに? 新発見されたネクロポリスから手指の模型などが出土

ギリシャでおよそ2000年前に墓地として使用された後、病気治癒のパワースポットとして生まれ変わった遺跡を考古学者たちが発見した。

墓地の外側で見つかった、奉納品と思われる土製の「指」。Photo: Facebook/Greek Ministry of Culture

ギリシャのペロポネソス半島にあるコリントス近郊の町キリオモディで、同国の考古学チームが発掘調査を行った。ギリシャ文化省が3月10日に発表した声明によると、チームは2024年秋に巨大墓地の遺跡を発見。そこには意外な変遷が隠されていた。

LIVE SCIENCEが報じたところによると、巨大墓地はほぼT字型の構造をしており、2.7メートル×7.4メートルの主室があった。入り口は扉のような石板でふさがれており、その様式から考古学者たちは、ヘレニズム時代(紀元前323年~紀元前30年)に作られたと推測している。主室からは、女性の遺骨を納めた石棺と、壁に沿って置かれた5つの長方形の石組みの箱が見つかった。副葬品の多くは略奪されていたものの、硬貨や小さな壺、鉄や青銅の品々、香水瓶やガラスビーズなどヘレニズム時代とローマ時代の様々な遺物が残っていたという。

その中で注目すべきは、特徴的なデザインの「指輪」だ。指輪は金製で、古代から医療行為に関連するシンボルとされてきた蛇の横に、癒しと医療の神アポロの姿が彫られた半貴石が付いていた。

墓地で発見された、医療にまつわるモチーフが掘られた指輪。Photo: Facebook/Greek Ministry of Culture

また、墓の外側を調査したところ、地中から、吊り下げ用の穴が開いた粘土製の手の指や腕の模型が出土した。これらのことから、この場所にはかつて神殿が設けられており、病の治癒を求める人々が参拝して粘土製の身体の一部を奉納していたと考えられる。遺物の年代から考古学者たちは、墓地として数世紀にわたって使用された後、ローマ帝国後期(284年から395年頃)には、病気治癒のパワースポットとなったと推測している。

墓地が健康祈願の聖地となった具体的な理由については明らかになっていない。ギリシャ文化省によると、墓の外側の発掘はまだ完了しておらず、考古学者たちは、墓と神殿の元の形や、その使用と改修の正確な時期を解明するための調査を続行中だ。また、墓地のあるキリオモディでは、ローマ時代後期の住居や大型の窯などを含む遺跡の追加調査が計画されている。

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