1800円で買った素描がルノワール作の可能性。真贋鑑定はサザビーズを経て権威ある研究所へ

アメリカ・ペンシルベニア州の小さな街にある骨董品店のオーナーが入手した木炭のドローイングが、印象派の巨匠ルノワールの作品である可能性が高いことが分かった。値段はわずか12ドル(約1800円)だった。

フランス印象派の代表的画家、ピエール=オーギュスト・ルノワールのドローイングと見られる作品(2025年撮影)。Photo: Courtesy Heidi Markow

今年1月、アメリカ・ペンシルベニア州イーストンで骨董店サルベージ・グッズ・アンティークを営むハイディ・マーコウは、モンゴメリー郡のコレクターが開いたオークションで、あるドローイングに目を止めた。それが「特別なもの」だと見た彼女は、息子のカール・パオリナに他の2つの出品作とともに入札を行わせ、その間に別の品を吟味していたとABCニュースの取材に答えている。パオリナはそれらの3作品を、それぞれ12ドル(約1800円)で落札した。

その後2人は、この作品がピエール=オーギュスト・ルノワールによるものだと知る。アートコレクターでキュレーターでもあったルイス・C・マデイラ4世が所蔵していたこの絵の額縁の裏には、アメリカに輸入されたことを示すスタンプがあるという。

作品に記された署名や額、使用された紙の種類から、真作ではないかと考えたマーコウは、2カ月にわたってルノワールに関するありとあらゆるドキュメンタリーを見続け、独自の調査を行った。最終的にサザビーズに問い合わせたところ、同社は彼女に美術品鑑定士を紹介し、その鑑定士がルノワールのものであることを確認した。

さらに、19世紀フランス美術に関するカタログ・レゾネ(総作品目録)の編纂拠点として知られるニューヨークの美術史研究専門機関、ウィルデンスタイン・プラットナー研究所が、追加鑑定を行うことになった。4月10日に予定されている鑑定でルノワールの真作だと認められた場合、この作品はルノワールの公式カタログ・レゾネに掲載されることになる。

US版ARTnewsの取材に応じた発見者のマーコウは、「徹底的に調べましたし、フィラデルフィアの名士であるマデイラ家の所蔵品だったこともあるので、絶対とは言いませんが楽観的に考えています。ただ、私はルノワールや美術品鑑定の専門家ではないことを念押ししておきます」と語り、こう続けた。

「だから、私はウィルデンスタイン・プラットナー研究所に真贋鑑定を託すのです。彼らの持つ専門知識は、この作品がカタログ・レゾネに掲載される価値があるかどうかを判断する上で極めて重要です。私自身も鑑定士なので、美術品の世界では徹底的な調査と専門家による分析が必須だと考えています。調査結果を楽しみにしていますし、ルノワールの作品のさらなる理解に貢献できるかもしれないことをありがたく思っています」

19世紀後半のものとされる44×42センチほどのドローイングに描かれているのは、ルノワールの妻、アリーヌ・シャリゴだと見られている。(翻訳:石井佳子)

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