カラヴァッジョの「新発見」フィーバーに便乗か。スペインの美術商が真作と偽り4400万円で売却

イタリア・バロックの巨匠カラヴァッジョ(1571-1610)の真作であるとして、約273万円で購入した絵画を約4400万円で売却したスペインの美術商が、スペイン当局に通報された。

カラヴァッジョの真作として販売された《Ecce Homo with Two Executioners(この人を見よ:二人の死刑執行人)》。Photo: X/@josemariaolmo

3年前にカラヴァッジョの「新発見」の絵画が美術界を沸かせたが、これに続く真作が見つかったと騙る詐欺事件がこのほど明るみに出た。渦中の絵画は《Ecce Homo with Two Executioners(この人を見よ:二人の死刑執行人)》。スペインのメディア、エル・コンフィデンシアルによると同作は、2022年12月のオークションでわずか1万6939ユーロ(現在の為替で約273万円)で落札された後、2023年2月にスペインの美術商ヘレニア・トリロによって29万7000ドル(同・約4400万円)で実業家に売却された。

売却の際、トリロは他の投資家も同作を狙っていると話し、購入を急がせるよう圧力をかけたという。 そして資金が振り込まれた後、ほかの専門家による鑑定を希望した購入者を妨害。最終的にトリロは、この作品が本物のカラヴァッジョではないことを認め、カラヴァッジョに影響を受けた17世紀のフランス人画家、ヴァランタン・ド・ブーローニュの作品である可能性を示唆していた。

トリロの言動を不審に思った買い手は、この取引が詐欺の可能性があるとしてスペイン当局に通報した。 そして2024年6月に、スペイン市民警備隊がトリロの自宅を捜査し絵画を押収。 捜査の結果、トリロは同作を買い手に引き渡さず、スイスのヌーシャテルにある家に送る計画だったことも判明した。この一連の取引には、フィレンツェのウフィツィ美術館のカラヴァッジョ専門家を装ったサラ・ムニョスや、トリロの利益を曖昧にするために偽の請求書を発行したマドリードのディーラー、ダビド・バディアが関与していた可能性がある。

同作は、2024年の夏にプラド美術館に送られ、専門家による鑑定が行われた。その結果、この絵はイタリア・バロックの伝統絵画に属するが、カラヴァッジョとは無関係であると判断。カラヴァッジョのライバル的存在だった、アンニバレ・カラッチ派の無名の画家の作品と鑑定された。 それにより、同作の推定価格はわずか2万2000ドル(330万円)まで急落した。

11月の取り調べでトリロは顧客からの詐取を否定したが、今後マドリードで行われる裁判で、プラド美術館の鑑定結果が重要な証拠となりそうだ。

だが、もし《Ecce Homo with Two Executioners(この人を見よ:二人の死刑執行人)》が本物だったとしたら、29万7000ドル(現在の為替で約4400万円)という値段は破格だっただろう。3年前に新発見された《Ecce Homo(エッケ・ホモ:この人を見よ)》は、2024年にスペイン在住のイギリス人によって3900万ドル(現在の為替で約62億円)で購入されているからだ。(翻訳:編集部)

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