世界主要美術館のSNSフォロワー数調査で「X離れ」が明らかに。コンテンツ右傾化による退会が原因?

アート・ニュースペーパーは、来館者数ランキング上位100の美術館のSNSフォロワー数を算出・分析したレポートを発表した。主要美術館のほとんどがフォロワー数増加となった一方、Xのフォロワーは減少していることが明らかになった。

保守政治活動協議会に登壇しアルゼンチンの大統領から贈与されたチェンソーを掲げるイーロン・マスク。Photo: Andrew Harnik/Getty Images
保守政治活動協議会に登壇しアルゼンチンの大統領から贈与されたチェンソーを掲げるイーロン・マスク。Photo: Andrew Harnik/Getty Images

アート・ニュースペーパー紙は「世界の美術館入場者数ランキング」の発表に続いて、上位100美術館のInstagram、Facebook、X(旧Twitter)、そしてTikTokの合計フォロワー数を算出した最新の調査結果を公表した。

来館者数では例年通り、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やメトロポリタン美術館(MET)、テートルーブル美術館といった世界有数の文化施設が上位20位までに名を連ね、日本からは、チームラボプラネッツ TOKYO DMM(24位:約243万人)、東京国立博物館(25位:約243万人)、東京都美術館(35位:約199万人)、国立新美術館(40位:約177万人)、そして国立西洋美術館(56位:約137万人)の5館が100位入りを果たした。

SNSフォロワー数調査では、2023〜2024年にかけてほとんどの美術館がSNSの総フォロワー数を伸ばしていたが、中でも最も高い増加率を記録したのは、MET(9.7%増)、ロンドン・ナショナル・ギャラリー(9%増)、アムステルダム国立美術館(8.7%増)の3館。とくにアムステルダム国立美術館は、Instagramのフォロワー数がこの1年で12万5000人以上も増加した。メトロポリタン美術館はTikTokの伸び率が高かった。アート・ニュースペーパーは、その理由として同館で昨年5月に開/催されたセレブリティやファッションアイコンが集うメットガラをTikTokがスポンサーしたことを挙げている。また、ロンドン・ナショナル・ギャラリーのフォロワー増加については、200周年記念に向け、人気コンテンツクリエイターとのコラボレーションをはじめとするデジタル施策が功を奏したのではないかと考察している。

トランプ再任によるXからの脱出劇

同メディアは様々な角度からこの調査を分析しているが、中でも注目すべきは、全体的にXのフォロワー数が減少傾向にある点だ。とくに上位20の美術館では平均して約2%減少しており、その背景として、Xを率いるイーロン・マスクの発言や保守的な投稿が目立ったことが影響していると推察。実際に、一般ユーザーだけでなく一部の企業が広告出稿や投稿を停止したり、アカウントを削除するといった措置を講じている

また、オスロ国立美術館やロサンゼルスのザ・ブロードシカゴ美術館など、Xのアカウントは残しながらも投稿を停止する「クワイエット・クイッティング(静かなる撤退)」を選んだ施設も少なくないと指摘。パリでは、ポンピドゥ・センター(1月20日から)とオルセー美術館(2月3日から)がそれぞれ投稿をストップしたという。

X離れが進む欧米の文化施設に対し、来館者数ランキングに入った日本の5施設は、チームラボプラネッツを除くとXのフォロワーが最も多く、展覧会のプロモーションや閉館日の案内など、現在でも積極的に運用されている。総務省が発表した2023年のSNSの利用率をみると、調査対象者の49%がXを利用しており、1週間にXを利用した秒数(Total Active Seconds)も687.2億秒と日本が世界で一番長いことがわかっている。日本の5施設のSNSフォロワー数は以下の通り。

1位:国立新美術館(約55万人)
2位:チームラボプラネッツ TOKYO DMM(約41万人)
3位:東京都美術館(約32万人)
4位:東京国立博物館(約31万人)
5位:国立西洋美術館(約19万人)

調査報告では、Xの代替SNSとしてThreadsや分散型SNSのBlueskyの活用実績についても触れられている。これによると、Threadsのアカウントは開設しても活用していない美術館が多く、Blueskyに至っては、来館者数トップ100の美術館のうち、マドリードのプラド美術館とルーブル美術館をはじめとする19館しかアカウントを運用していないことがわかった。

一方、アーティストや批評家の中には、イーロン・マスクやメタのマーク・ザッカーバーグがドナルド・トランプへの支持を表明したことを理由に、XやInstagram、Threadsのアカウントを停止し、2024年2月から一般公開が始まったBlueskyへと発信の場を移した者もいるようだ。アート・ニュースペーパーの別の記事を参照すると、カナダに拠点を置くアーティスト、ラファエル・ロザーノ=ヘマーもその一人で、彼はBlueskyに移行するにあたってFacebookに次のような投稿を残している。

メタのアルゴリズムは私が民主的社会主義者であり、進歩主義的なコンテンツを共有したりフォロー、『いいね!』をしていることを理解しています。しかし今となっては、有害で右翼的な投稿が私のタイムラインに上がるようになってきました。皆が知るとおり、Faceookが中立的な態度を示したことはこれまでもありませんでしたが、いまでは直接的な政治介入が如実に表れています」

ガーディアン紙も2024年12月の記事でX離れの現象について言及しており、それによれば、10月6日から2カ月の間にアメリカのXユーザーは270万人も減少した一方、Blueskyのユーザー数は240万人ほど増加したという。トランプ大統領がスミソニアンをはじめアメリカの文化芸術機関に対する圧力を強める中、こうした状況はさらに加速する可能性がある。

とはいえ、InstagramやXなどと比較すると、Bluesky上でのアート関連の投稿はまだ少ない。ロサンゼルスの山火事で被害を受けたアーティストへの支援活動では、Instagramが最も活用されていた。

Bluesky、そして同じく分散型SNSを謳っているMastodonなど、Web 2.0の時代に誕生した中央集権型のSNSとは異なり、広告を出稿する企業ではなくユーザーを第一に考えるサービスの提供が始まっているなか、文化機関や美術関係者は今後、どのプラットフォームを通じてファンたちとのコミュニケーションを強化していくのか。今後の動向に注目したい。

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