古代の子どもは冥界との交信役だった? 3人の考古学者が洞窟壁画と子どもに関する新たな仮説を発表
洞窟壁画の近くで子どもの足跡や手形が発見されていたことから、これまで、洞窟の中で子どもたちへの教育が実施されてきたと考えられてきた。しかし、これを覆す驚きの新仮説がテルアビブ大学の研究者によって発表された。

先史時代を生きた子どもたちの足跡や手形、そして子どもたちが指で描いた壁画が洞窟の奥深くから発見されているが、なぜ古代の人類は薄暗く危険な道を通り、洞窟の中へ子どもたちを連れていったのだろう?
これまで、幼児や10代前半の子どもたちにコミュニティの知識や習慣を伝承するために教育目的で洞窟に連れて行ったという仮説が有力だったが、テルアビブ大学のジェイコブ・M・アルコウ考古学・古代東欧文化研究所に所属する考古学者、エラ・アサフとヤフィト・ケダル、そしてラン・バルカイの3名は、この従来説を覆す新説を発表した。
フランスとスペインの洞窟壁画を対象に調査を実施したかれらによれば、旧石器時代の人類は、洞窟を冥界への入り口として扱っていた可能性があるという。そして当時、幼い子どもたちは、生まれる前に暮らしていた異世界と、誕生後の現世の両方に属している存在であるがゆえに、冥界をはじめとするさまざまな精神世界と交信し、非人間的存在とコミュニケーションを取ることができると信じられていた。つまり、死後の世界とコミュニケーションを取るために、子どもたちを洞窟に連れて行っていたというのが3人の仮説だ。論文の著者の一人であるケダルはこう語る。
「洞窟壁画に関する研究はこれまでも行われてきましたが、子どもたちに焦点を当てたものはほとんどありませんでした。一般的には、子どもたちに伝統や知識、コミュニティの慣わしを伝えるために洞窟の中で教育を実施していたとされていましたが、私たちは、洞窟の奥深くで異世界の領域に住む存在と交流するために子どもを連れて行っていたのではないかと考えています」
一方、かれらは、古代人が洞窟の奥深くで松明を付けたことや、空気が循環していないことから低酸素状態に陥っていたことで、祖先の霊と交信しているという幻覚を見ていただけの可能性が高いと見ている。
この研究ではさらに、旧石器時代の洞窟画のほとんどが幾何学模様や動物の絵であった理由に、それらが純粋な芸術表現ではなく、洞窟の中で行われた儀式の記録であった可能性を指摘している。
アサフ、ケダル、そしてバルカイが発表した新説は、旧石器時代の子どもに関する従来説とは対照的だ。3人の仮説が正しければ、子どもたちは単にコミュニティの歴史を受動的に学ぶ存在ではなく、冥界にいる祖先や宇宙的な存在とのコミュニケーションにおいて重要な役割を担い、積極的に関与していたことになる。そして、洞窟内に子どもたちがいたことは、精神的な調和を保つと同時に、将来の地域社会の指導者となるための訓練という2つの目的を果たしていた可能性がある。