約1万年前の温暖化の記録!? アルゼンチン・パタゴニアの洞窟壁画が8200年前のものと判明
アルゼンチンの人里離れた洞窟にある壁画が、パタゴニア最古の岩絵の一つであることが最新の研究で明らかになった。
アルゼンチンの人里離れた洞窟にある岩絵が、パタゴニア最古のものの一つであったことが最新の研究で明らかになった。パタゴニアは人類がもっとも遅れて定住した地球上の場所のひとつだが、この洞窟壁画はこれまで、2000〜3000年ほど前に制作されたものと考えられてきた。
しかし、最近『サイエンス・アドバンシズ』誌に発表された研究によると、このクエバ・フエヌル1(Cueva Huenul 1)遺跡には、人物や動物、抽象的な紋様などの絵が900点近く描かれており、その中の一つである不思議な櫛のような模様は、放射性炭素年代測定法を用いて調査したところ、およそ8200年前に描かれたものだという。
これらの絵を描いた当時の人々は、その後何千年もの間、黒い顔料を用いて同じデザインを描いてきた。考古学者たちによると、これらの黒い絵は、潅木やサボテンを燃やして炭化させた木で描かれているという。またニューヨーク・タイムズ紙が報じたところでは、このデザインは氷河期が終わり温暖化が進んだ頃、それを伝えるために考案された可能性があるという。
南アメリカ大陸の南端に位置するパタゴニアに人類が到着したのは、氷河期の末期であるおよそ1万2000年前であると考えられている。しかし約1万年前ごろには温暖化によって乾燥が進み、人の居住が難しくなった。この洞窟壁画は、この時期にこの場所が放棄されたことを示唆しているとみられる。
人々がこの地に定住しはじめてからこの絵を描くまでには3000年もの時間がかかっているが、彼らは、住民の集合的な記憶や口承伝承を保存するためにこの櫛のモチーフを考案したのかもしれない。今でこそ、この洞窟壁画は当時の温暖化を人々が乗り越えた証として機能しているが、このモチーフの意味や目的は依然として不明だ。
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