今週末に見たいアートイベントTOP5: コルビュジエらによる20世紀の「住まいの実験」を検証、エルズワース・ケリーの初期創作にフォーカス

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

フランク・ゲーリー フランク&ベルタ・ゲーリー邸 1978年 Ⓒ Frank O. Gehry. Getty Research Institute, Los Angeles(2017.M.66)
リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s(国立新美術館)より、フランク・ゲーリー フランク&ベルタ・ゲーリー邸 1978年 Ⓒ Frank O. Gehry. Getty Research Institute, Los Angeles(2017.M.66)

1. TOKYO NUDE- boundary- 安藤瑠美(Otherwise Gallery)

私たちが見る世界の「解像度」を問う

安藤瑠美は、レタッチ技術を駆使し「虚構の東京を写真で作る」ことをテーマにしたシリーズ「TOKYO NUDE」を2020年より発表してきた。広告、窓、室外機といった都市のノイズを消去し、都市の風景を極限まで研ぎ澄ますことで、東京という都市の本質を浮かび上がらせるその作品群は、現実の風景でありながら絵画的なフラットさを持ち、少しの違和感と独特の視覚体験を生み出している。

本展では新たな試みとして「解像度の劣化」と「コラージュ」による視覚的再構築を取り入れている。私たちが世界をどのような解像度で見ているのかという問いから、解像度の違いが風景に対する認識の差異を生み出し、同じ都市の中に無数の「境界」が存在することを示唆する。意図的に解像度を落とし、写真が抽象画へと変容するプロセスを作品に組み込むことで、一つの画面内に異なる解像度を共存させ、「境界」というテーマをより際立たせる作品群となっている。

TOKYO NUDE- boundary- 安藤瑠美
会期:3月7日 ~ 4月12日
場所:Otherwise Gallery(東京都港区南青山5-7-17 小原流会館B1F)
時間:12:00~19:00
休館日:日月火


2. ロバート・キャパ 戦争(東京都写真美術館)

展示風景。
「Dデー作戦」でオマハ・ビーチに上陸する米軍、ノルマンディー、フランス 1944年
パリ解放を祝う人びと パリ、フランス、1944年
崩れ落ちる共和国側の兵士 エスぺポ近郊、コルドバ前線、スペイン、1936年

キャパがファインダー越しに見つめた戦争

20世紀が生んだ偉大な写真家のひとり、ロバート・キャパ(1913-54)の写真証言を通して戦争を考える。キャパは「カメラの詩人」と言われ、またすぐれた「時代の証言者」でもある。その写真の背景には苦悶するヒューマニストの眼があり、戦争の苛烈さをとらえるとき、そこにキャパの人間としてのやさしさ、ユーモアが表れている。

キャパは1930年代ヨーロッパの政治的混乱からノルマンディー上陸作戦など、様々な戦闘現場に立会い、命がけで撮影した。彼の写真は時空を超えて、後世の人びとにも訴えかける強いメッセージとなっている。本展は、東京富士美術館が所蔵するキャパの約1000点のコレクション・プリントから、「戦争」に焦点を当てた作品約140点を厳選して展示する。

ロバート・キャパ 戦争
会期:3月15日(土)~5月11日(日)
場所:東京都写真美術館(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
時間:10:00~18:00(金土は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜日(5月5日は除く)5月7日


3. リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s(国立新美術館)

藤井厚二 聴竹居 1928年 撮影: 古川泰造
フランク・ゲーリー フランク&ベルタ・ゲーリー邸 1978年 Ⓒ Frank O. Gehry. Getty Research Institute, Los Angeles(2017.M.66)
「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」国立新美術館 2025年 展示風景 撮影:福永一夫
「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」国立新美術館 2025年 展示風景 撮影:福永一夫

コルビュジエらの傑作から20世紀の「住まいの実験」を検証

20世紀にはじまった住宅をめぐる革新的な試みを、衛生、素材、窓、キッチン、調度、メディア、ランドスケープという、モダン・ハウスを特徴づける7つの観点から再考。世界の傑作14邸を中心に、20世紀に行われた住まいの実験を、写真や図面、スケッチ、模型、家具、テキスタイル、グラフィックなどを通じて多角的に検証する。

1920年代以降、ル・コルビュジエ(1887‐1965)やルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886‐1969)といった多くの建築家が、新たな技術を用いて機能的で快適な住まいを探求した。その実験的なヴィジョンと革新的なアイデアは、やがて日常へと波及し、人々の暮らしを大きく変えていった。本展は、快適性や機能性、そして芸術性の向上を目指した建築家たちによる戸建て住宅を紹介するとともに、彼らのデザインがどのように私たちの日常生活に影響を与えたかを明らかにする。なお、クラウドファンディングにより、ファン・デル・ローエの未完のプロジェクト「ロー・ハウス」を原寸大で実現した(この展示のみ無料)。

リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s
会期:3月19日(水)~6月30日(月)
場所:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
時間:10:00~18:00 (金土は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:火曜( 4月29日・5月6日は除く)5月7日


4. エルズワース・ケリー(TARO NASU)

Ellsworth Kelly, “Four Horizontal Color Panels”, 1968 © Ellsworth Kelly Foundation, Courtesy of Matthew Marks Gallery
展示風景。
展示風景。

アメリカ現代美術の巨人の初期創作を回顧

アメリカ現代美術における孤高の巨人とも呼ばれるエルズワース・ケリー(1923-2015)。彼は第2次世界大戦中に「Ghost Army(ゴーストアーミー)」と称された特殊部隊に配属され、カモフラージュのデザインを担当した。戦後はフランスに滞在し、ジャン・アルプの偶然性を制作に取り込む手法やアンリ・マティスの単純化を志向する線に学んだ。それらの経験をもとに、還元主義的な明快さを有する独特の抽象的造形を構築していった。

本展ではケリーの60年代に描かれたペインティングをはじめ、コラージュ、ドローイング、写真を含む計17点の作品を展示し、「図と地」のヒエラルキーからの解放を目指した彼の創作を多面的に紹介する。

エルズワース・ケリー
会期:3月22日(土)~5月10日(土)
場所:TARO NASU(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル4F)
時間:11:00~19:00
休館日:日月祝


5. 中島晴矢 個展「ゆーとぴあ」(WHITEHOUSE)

分断と紛争の時代における真の「ゆーとぴあ」とは?

中島晴矢は活動初期から、日本文学、サブカルチャー、都市論等を横断的に、かつそれらの意味構造を卓抜した想像力によって炙り出し、総合し作品化してきた。例えば2012年にギャラリーアントで開かれた初個展「REACH MODERN!」では小説家・横光利一の活動家精神を自身の身体に憑依させながら、日本の近代を見直す試みを展開。2014年の「ガチンコ ─ニュータウン・プロレス・ヒップホップ─」では新国立競技場建設案に端を発する都市と景観の問題を、東京郊外のニュータウンを舞台にした野外バーリ・トゥード(ルール無用の何でもありの格闘の形態)パフォーマンスとして展開し、東京という都市の身体の不在を暴露した。

本展「ゆーとぴあ」では、トマス・モアの「ユートピア」をアイロニカルに読み替え、日本のコントコンビ「ゆーとぴあ」のゴムパッチン芸によってマッシュアップするマルチチャンネルビデオ作品《ゆーとぴあ》を中心に展開。分断と紛争の時代における真の「ゆーとぴあ」像を模索していく。

中島晴矢 個展「ゆーとぴあ」
会期:3月27日(木)~ 4月20日(日)
場所:WHITEHOUSE(東京都新宿区百人町1-1-8)
時間:14:00~20:00
休館日:月~水、金

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