国連本部の隣にカジノ計画が浮上。「自由と民主主義博物館」との組み合わせで建設認可が有利に?

ニューヨーク市内に3カ所のカジノを建設するプロジェクトが進んでいる。現在、タイムズスクエアやコニーアイランドなど、11の開発提案が提出されているが、その中で注目されるのが国連本部ビルに隣接したフリーダムプラザの再開発計画だ。

フリーダムプラザを上から見た完成予想図。中央にある円形の建物に「自由と民主主義の博物館」が入るとされている。Photo: Courtesy of OJB

今年12月、ニューヨークのゲーミング施設立地委員会は、市内に割り当てられた3つのカジノ建設枠の事業者を決定する。現在11件の大規模開発案があり、それぞれが複合施設や新しい公園の建設、文化的設備の充実、近隣地域の活性化などを提案している。このカジノ計画について、ニューヨークの情報メディア、ゴッサミストが4月7日に報じたところによると、提案に博物館の建設を組み込んだデベロッパーがあるという。

その青写真を描いているのはソロヴィエフ・グループで、マンハッタンのミッドタウン東側、38丁目から41丁目にかけてのフリーダムプラザを数千億円規模のカジノ開発計画に活用するというもの。ここは、かつてコン・エジソンの発電所があった場所で、発電所の廃止後は同グループに売却されていた。イーストリバーに面し、隣には国際連合の本部がある。

11の計画案については、ニュースメディアのシティ&ステートが詳しく報じている。それによると、フリーダムプラザの再開発には約2万7000平方メートルにおよぶカジノのほか、高層マンション、1250室のホテル、500戸の手頃な価格の住宅、約1万9000平方メートルのウォーターフロントパーク、そして「自由と民主主義博物館」が含まれる。

博物館の詳細は明らかにされていないが、先月ソロヴィエフ・グループはニューヨーク・ポスト紙に対し、国際的なアーティストを起用するほか、ベルリンの壁の一部を常設展示すると述べている。また、同グループのマイケル・ハーシュマンCEOがニューヨーク・タイムズ紙の取材に答えたところによると、同社は現在、この博物館と同じテーマのインスタレーション《Path of Liberty: That Which United Us(自由の道:それは私たちを団結させた)》を敷地内に設置中だという。

来月お披露目されるこのインスタレーションは、クリエイティブ・スタジオのC&Gパートナーズがデザインし、写真家のダニエラ・ヴェイルがディレクションを行ったもので、自由の重要性に関する全米の人々へのインタビューが巨大なスクリーンに映し出される。ハーシュマンによると、来年はアメリカ建国250周年を記念したインスタレーションの設置を予定している。それについてハーシュマンは昨年12月、ニューヨーク・タイムズ紙に「建国を祝うためのものなので、政治的な議論の標的にはしたくありません。人々をつなぐ橋を架けるべき時なのです」と語った。

一方でハーシュマンは、博物館構想が生まれた背景には、愛国心や民主主義への関心の低下があるとゴッサミストに説明。博物館がそれを解決する一助になることを望むとして、こう持論を述べている。

「この国の一部の人々は、私たちが享受しているものを十分に理解し、感謝していないと思います。私はこの点について人々が意見を交わすような刺激を与えたい。それに理想的な場所がニューヨークなのです」

ハーシュマン、そしてソロヴィエフ・グループは、こうした公共心に訴えるプロジェクトが、12月のカジノ建設認可決定に向けて有利に働くことを望んでいるのだろう。(翻訳:石井佳子)

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