バンクシーも支援した「ビッグ・イシュー」企画のグラフィティ展が「落書き」で中止に。
ロンドンのピカデリーサーカスで3月21日から開催されていたグラフィティ・アートの展覧会の会場建物に、4月10日、チャールズ国王を攻撃する「落書き」が書かれたことで展覧会が中止されたことが分かった。

ロンドンのピカデリーサーカスにある建物で3月21日から開催されていたグラフィティ・アートの展覧会「ロング・ダーク・トンネル」が「落書き」により会期を3日残して急遽閉鎖されたとアートネットが伝えた。
展覧会を主催するアーツ・アーケードによると、同展はホームレス や生活困窮者を支援する雑誌「ビッグ・イシュー」ロンドン版と共同で企画された。出品者には10Foot、Tox、Fumeなどの著名なグラフィティ・アーティストが名を連ねており、これまで数千人が来場した。また、展覧会に合わせて制作された、10Footが臨時編集長を務め、バンクシーが展覧会のアーティストの1人にインタビューする目玉企画が組まれた「ビッグ・イシュー」は記録的な売り上げを叩き出し、同誌に推定50万ポンド(約9500万円)の収益をもたらした。
同展の会場がある建物は、約204億ドル(約2兆9000億円)相当の不動産を管理するとされるイギリス王室のクラウン・エステートの所有物だ。4月10日、建物の壁に「Fuck the King(国王くたばれ)」という落書きが書かれ、タイムズによると、クラウン・エステートはアーツ・アーケードに被害への対応を求めた。
それを受けてアーツ・アーケードは、Instagramに「展覧会場および近隣の建物に対する深刻な破壊行為と犯罪的損害の発生を受け、『ロング・ダーク・トンネル』展を予定より早く閉鎖する決断を残念ながら下しました。私たちが経験した犯罪的損害は完全に許容できず、軽視できる問題ではありません」と書き込み、展覧会の中止を発表した。
展覧会の中止について、10Footはタイムズに次のように話した。
「いつもの話です。私たちは反社会的な愚か者として扱われ、広く肯定的と認められることをしても彼らは対話に応じない。権力者にいじめられると、狩りに追われるキツネのような気分になります」
「私たちは良い意図だけを持ってこの展示会に全力を注ぎました。何百人もの人々が全国各地から来てくれ、ホームレスの人々のために数十万ポンドを集めました。しかし誰かが夜中に『国王くたばれ』と書いたとき、私たちはリスクだと言われてプラグを抜かれた。彼らはそれを消すこともできたのに、代わりに私たちを犠牲にすることを選んだのです」
また展示期間中、タイムズによれば会場付近でゲリラ的なポスター貼りも起きたようだ。ポスターにはアーティストのタグの上に赤いラテン語の文字で『graf scriptores decollabuntur(落書きアーティストは首をはねられるだろう)』という意味の言葉が書かれていたという。これらの犯人はまだ見つかっていない。アートネットによるとクラウン・エステートの代表者はメールで「進行中の警察の捜査については言及できない」とし、展覧会の閉鎖はアーツ・アーケードの判断であると答えたという。