2025年グッゲンハイム・フェローシップはシアスター・ゲイツら198人が選出!「社会を希望に満ちた未来へと導いてほしい」

世界的アーティストへの登竜門とも言われているグッゲンハイム・フェローシップの2025年度受賞者198人が発表された。このなかには、昨年東京で個展を開催したシアスター・ゲイツミランダ・ジュライが含まれている。

シアスター・ゲイツ《1965: Malcolm in Winter: A Translation Excercise》の展示風景。Photo: Matthew Chattle/Future Publishing via Getty Images
シアスター・ゲイツ《1965: Malcolm in Winter: A Translation Excercise》の展示風景。Photo: Matthew Chattle/Future Publishing via Getty Images

世界で最も権威のある賞のひとつであるグッゲンハイム・フェローシップの2025年受賞者198人が発表された。約3500人の応募者のなかから選ばれたフェローには、「可能な限り自由な条件の下で最高レベルの」研究を進めるため資金が授与される。

100周年を迎える今年のフェローシップでは、自然科学や社会科学、人文科学、そして創造的芸術の4カテゴリーに分けられた53の分野から選ばれた。同フェローを主催するグッゲンハイム財団は声明で、選出された芸術家と学者たちは「気候変動、先住民の研究、アイデンティティ、民主主義と政治、被収容者の人権問題、常に進化を続けるコミュニティの役割をはじめとする時宜にかなったテーマや問題に直接的に応える」プロジェクトを創出していたと発表した。

芸術部門で受賞したフェローのなかには、シアスター・ゲイツ、ラウール・ゲレーロ、ジューリー・トレンティーノ、ウルリケ・ミュラー、デニス・デファイバ、サラ・クワイン、ファラ・アル・カシミが含まれる。

昨年東京の森美術館で個展「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」を開催したゲイツは、学際的なアーティストであり、シカゴ大学でビジュアル・アーツの教授も務める。彼は「Rebuild Foundation」と題された取り組みを通じて、黒人のコミュニティが古くから形成されていたシカゴのサウス・サイドにある40近い廃墟をスタジオや図書館、そして手ごろな価格で住める住宅に再生している。

西海岸を拠点に長年活動しているゲレーロは、1979年には全米芸術基金(NEA)の写真フェローシップを受賞。彼は、南カリフォルニアにおけるメキシコ人と先住民の歴史の不可分性に関する作品を多く制作している。2021年からはデイヴィッド・コルダンスキー・ギャラリーに所属している。

アル・カシミはビジュアルアート部門で最年少のフェローの1人だ。日常を鮮やかなデジタル写真で切り取り、ディアスポラの複雑さを表現した作品で知られている彼女は、グッゲンハイム美術館が開催するヤング・コレクターズ・カウンシル・パーティで展示を実施している。

これ以外にもフェローシップを受賞したアーティストには、テレサ・ベイカーやルーカス・ブラロック、ディオン・リー、マルティーヌ・グティエレスといった注目作家が含まれる。また、昨年プラダ財団が企画し、東京を含むプラダの拠点で展覧会を開催したミランダ・ジュライは、フィクション部門でフェローに選ばれた。

一方、芸術支援を取り巻く環境に目を向けると、トランプ政権下でNEHをはじめとする連邦助成機関への予算が大幅に削減され、数千ドル規模の助成金が廃止されている。グッゲンハイム・フェローシップをはじめとする芸術支援の重要性について、グッゲンハイム財団の会長であるエドワード・ハーシュは声明のなかでこう述べている。

「このフェローシップ・プログラムは、過去100年でアメリカの知的・文化的生活に変革をもたらした取り組みの一つと言えるでしょう。知的好奇心を追求することがままならないこの時代に、当フェローシップは、先見性のある科学者、学者、作家、芸術家の生活と作品を支援してきました。私たちは、こうした創造的な思考をもつ人々が、現代社会が抱える課題に取り組み、より良く、より希望に満ちた未来へと社会を導くことができると信じています」

その他の受賞者はこちら。(翻訳:編集部)

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