モネの「ポプラ並木」シリーズ作品に最高72億円の予想。5月にクリスティーズのイブニングセールへ
クロード・モネがジヴェルニーのエプト河畔に立つポプラ並木を描いた連作から、夕暮れの情景が描写された作品をクリスティーズ・ニューヨークが5月のイブニングセールに出品する。予想最高落札額は約72億円で、このシリーズの最高額樹立も期待されている。

クリスティーズが来月ニューヨークで開催するイブニングセールに、クロード・モネの《Peupliers au bord de l'Epte, crepuscule(エプト川沿いのポプラ並木、夕暮れ)》(1891)を出品することが明らかになった。予想落札価格は3000万ドルから5000万ドル(最近の為替レートで約43億〜72億円、以下同)。
夕暮れのポプラ並木を描いたこの作品は、近代画商の草分けで、印象派の普及に力を入れた伝説的ディーラー、ポール・デュラン=リュエルが1892年に購入。その後、1955年まで60年以上、その一族が所有していた。この点についてクリスティーズ・ニューヨークの印象派・近代美術部門責任者を務めるヴァネッサ・フスコは、US版ARTnewsにこう説明する。
「140年以上も前に描かれた絵にしては、これまでの所有者の数が非常に少ないのがポイントです。30年前、50年前に描かれたものであっても、かなりの数の所有者を経て、来歴の記述が長くなることも少なくありません」
今回の出品以前、《Peupliers au bord de l'Epte, crepuscule》はボストン美術館で30年以上展示されていた。フスコが初めて目にしたのも同美術館だったという。また、全米やヨーロッパの美術館に何度も貸し出されている。
高さが90cmほどあるこの作品は、モネが1891年の春から秋にかけ、パリの北西にあるジヴェルニーで制作した「ポプラ並木」シリーズ24点の1つ。フスコは過去に、この連作中の《Peupliers au bord de l'Epte,automne(エプト川沿いのポプラ並木、秋)》も扱っている。2022年5月に、故アン・H・バスのコレクションからクリスティーズ・ニューヨークに出品されたもので、落札額は手数料込みで3650万ドル(約52億円)だった。
さらにサザビーズ・ニューヨークでは、《Peupliers au bord de l'Epte, temps couvert(エプト川沿いのポプラ並木、曇天)》が、2023年11月のセールで3080万ドル(約44億円)で落札されている。どちらも予想落札額のボトムは3000万ドルだった。
この2作品やメトロポリタン美術館所蔵の《The Four Trees(4本のポプラ)》と比較すると、5月のセールに出品される絵は、ピンク、紫、青の色使いが見事で「素晴らしい雰囲気」があるとフスコは言い、こう続けた。
「モネの色の重なりやその濃さを正確に写真に収めるのは非常に困難です。実際にこの絵の前に立つと、その色合いやスケール感に感動が湧き上がってきます。空に向かって真っ直ぐに立つポプラの直線的な構図には卓越したものがあります」
フスコは、《Peupliers au bord de l'Epte, crepuscule》が「ポプラ並木」シリーズの落札額新記録を樹立する可能性もあると考えている。オークション前の展示は4月19日の台北を皮切りに行われるが、ここにはクリスティーズの戦略的判断がある。フスコはこう期待を語った。
「特に台北では一流の印象派作品への関心が高く、モネをはじめとする印象派には旺盛な入札があります。また、巡回先の欧米でも、数多くの方に作品を直接見ていただけると考えています」(翻訳:石井佳子)
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