イーロン・マスクのDOGEがナショナル・ギャラリー館長らと会談。コスト削減の標的に?
4月17日、イーロン・マスク率いる政府効率化省(DOGE)のメンバーが、歴史的美術品を多数所蔵するワシントン・ナショナル・ギャラリー幹部との会談を行った。トランプ政権が文化面での締め付けを強める中での動きに、文化施設関係者の間で懸念が広がっている。

ブルームバーグ・シティラボが伝えたところによると、4月17日にワシントン・ナショナル・ギャラリーのケイウィン・フェルドマン館長と事務長兼法律顧問のルイス・バケダノが、政府効率化省(DOGE)のメンバーと会談を行った。フェルドマン館長がスタッフ宛に送付したEメールでは、内容は同ギャラリーの「法的地位」に関するものだったという。
ドナルド・トランプ大統領は1月の2期目就任直後に、連邦政府機関におけるDEI(多様性、公平性、包摂性)推進の廃止を求める大統領令に署名。それを受けたナショナル・ギャラリーと、やはりワシントンD.C.に本部を置くスミソニアン協会は関連部署の閉鎖を行っている。
これまでトランプ政権の主な標的は、21の博物館・美術館、14の研究・教育施設および国立動物園を運営するスミソニアン協会だった。3月下旬には、同協会が「わが国の歴史を書き換えるための一貫した広範な取り組みを行っており、客観的事実を真実ではなくイデオロギーに基づく歪んだ物語に置き換えている」として、「分断を招く」「反アメリカ的」な内容を展示から排除するよう命じる大統領令に署名した。
しかし、官民パートナーシップとして運営されるナショナル・ギャラリーはスミソニアン協会の一部ではなく、連邦政府組織とは見なされない。ただし、連邦議会から運営面での資金援助を受けており、報道によると昨年度の援助額は約2億1000万ドル(約300億円)。一方、所蔵品の取得などギャラリーの拡大に要する資金は私的信託で賄われている。そのコレクションはレオナルド・ダ・ヴィンチやフェルメールなどのオールドマスターから印象派、アメリカ美術の名品まで十数万点におよぶ(入場料は無料)。
今回の動きは、イーロン・マスクが率いるDOGEのコストカットの対象が連邦政府機関を超えた範囲にも及ぶのではないかとの憶測や、ナショナル・ギャラリーが政府からの圧力にさらされることへの警戒感を呼んでいる。DOGEの意図が明らかでない中、ブルームバーグ・シティラボが入手したフェルドマン館長からスタッフへのメールにはこう書かれていた。
「私たちは設立以来、官民パートナーシップとして全ての政権と協力してやってきました。今後も政権や議会と協力し、芸術の素晴らしさを後世に伝え、アメリカ国民と共有する使命を果たすことに注力していきます」(翻訳:石井佳子)
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