プーチン大統領が贈ったトランプ大統領の肖像画をCNNが公開。手掛けたのは「ロシア人民芸術家」
暗殺未遂事件に遭ったドナルド・トランプ大統領の姿を描いた肖像画を、プーチン大統領が3月に贈呈した。ロシアとアメリカの関係改善を図る外交的な意図があったとされるが、トランプ大統領は自身が運営するSNSで警戒感を示し、最近のロシアによるウクライナ攻撃を強く非難した。

3月24日、ウラジーミル・プーチン大統領がドナルド・トランプ大統領に新しい肖像画を贈っていたことが明らかになったが、その肖像画がCNNによって公開された。肖像画は、トランプ政権のウクライナ・中東担当特使であるスティーブ・ウィトコフとロシアによるウクライナ侵攻の終結について協議したのち、プーチン大統領からウィトコフに託され、ホワイトハウスに届けられた。ウィトコフによれば、「多少手が加えられていたが、美しい肖像画だった」という。
CNNが独占公開した肖像画には、ペンシルベニア州で暗殺未遂事件に遭った際のトランプ大統領が描かれている。手掛けたのはロシア人アーティストのニカス・サフノロフで、彼はCNNの取材に対して次のように語っている。
「トランプ大統領が流した血や傷跡、命を狙われたときに振り絞った勇気を表現することに重きを置きました。襲撃された後、彼は屈することなく起き上がり、アメリカとの一体感を示し、腕を突き上げることで、国が必要としているものを取り戻すという決意を示したのです。そんなトランプ大統領の姿を描くことで、ロシアとアメリカを結びつけることができるのではないかと考えました」
保守派のコメンテーター、タッカー・カールソンのYouTube番組「Tucker Carlson Show」に出演したウィトコフは、「プーチン大統領は、ロシアの著名な芸術家にトランプ大統領の肖像画の制作を依頼し、それをトランプ大統領に届けるよう私に頼みました」と明かした。また、プーチン大統領の報道官を務めるドミトリー・ペスコフは記者団に対し、大統領が「アメリカの同僚に個人的な贈り物」を渡したと述べている。
北朝鮮の国務委員長である金正恩やフランシスコ教皇、そしてプーチン大統領の肖像画を過去に手がけたことで知られるサフノロフは2021年、プーチン大統領から「美術分野における多大な功績」を認められ、「ロシア人民芸術家」の称号を授与されている。サフノロフはCNNに対し、ロシア大統領から称賛の言葉を受け、肖像画はロシアとアメリカの関係改善に役立つ大切な作品だと評価されたと述べた。
この肖像画がトランプ大統領のもとに届けられたのは、アメリカ政府がロシアとウクライナの和平交渉の仲介を試みているさなかだった。その後、プーチン大統領が復活祭に合わせて30時間の停戦を発表したことで、進展があったかのように見えたが、ウクライナ政府はイースターの日曜日までにロシア軍が停戦合意を約3000回違反したと非難。一方のロシア政府は、数百機のウクライナ製ドローンと砲弾を撃退したと主張している。
さらにロシアは4月24日、2024年の夏以来となるキーウへの大規模攻撃を開始。これについてトランプ大統領は自身が設立したSNS、トゥルース・ソーシャルへの投稿を通じて、「ロシアのキーウに対する攻撃は不愉快だ。必要のない、非常にタイミングの悪い行為だ。ウラジーミル、やめてくれ! 週に5000人もの兵士が死んでいる。和平協定を締結しよう!」と呼びかけた。さらに4月26日、フランシスコ教皇の葬儀の傍らでウクライナ大統領のウォロドミル・ゼレンスキーと会談したトランプ大統領は、プーチン大統領が示す戦争終結の意思を疑問視。会談後、トランプ大統領は同SNSに再び投稿し、プーチン大統領が「私を利用しようとしている」との懸念を示した上で、「プーチン大統領がウクライナの国民が暮らしている地域にミサイルを発射する理由はない」と批判している。
肖像画を贈ることでアメリカとの関係改善を期待したロシアの思惑は外れたわけだが、トランプ大統領の肖像画をめぐる話題はほかにもある。トランプ大統領は、コロラド州議会に掲げられている自身の肖像画を「本当に最悪だ」と4月に酷評し、物議を醸した。肖像画を手がけたイギリス人画家、サラ・ボードマンは、トランプ大統領による批判は自身の活動に対する「敬意や公正さが欠如している」ものであり、彼女のキャリアが脅かされかねないとの懸念を示している。(翻訳:編集部)
from ARTnews