今週末に見たいアートイベントTOP5: 新旧作で岡﨑乾二郎の創作の核心に迫る、ルー・ヤンが代表シリーズの最新作を発表
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. 千賀健史・林田真季写真展「AFTER ALL」(RPS京都分室パプロル)
産業廃棄物の不法投棄と特殊詐欺の変遷と交差に迫る
アーティストの千賀健史と林田真季は、それぞれ異なるアプローチから社会の見えにくい構造に迫る作品を制作してきた。本展では、日本における産業廃棄物の不法投棄と特殊詐欺という、一見無関係に思える2つの社会問題がどのように交差し、変遷してきたのかを浮かび上がらせる。
1990~2000年代、日本では産業廃棄物の不法投棄が裏社会の収益源として横行していた。千賀は不法投棄に関するリサーチを通じて環境の変化が社会に与える影響を探り、林田は特殊詐欺をテーマに、裏社会が収益源を変えながら継続していく構造に焦点を当てる。それらを通して社会の深層にある構造を明らかにするとともに、私たちの行動が無意識のうちに裏社会を支えてはいないかと問いかける。
千賀健史・林田真季写真展「AFTER ALL」
会期:4月12日(土)~5月11日(日)
場所:RPS京都分室パプロル(京都市上京区老松町603)
時間:13:00~19:00
休館日:なし
2. 小林エリカ「Yの一生 The Life of Y - ひとりの少女」(Yutaka Kikutake Gallery Roppongi)
戦中に生きた少女の声を掬う
目に見えないものや歴史、家族の記憶、場所の痕跡から着想を得て、小説、コミック、写真、映像、インスタレーションなど、様々な手法で表現活動する小林エリカの個展。最近では、入念なリサーチに基づいてこれまで語られてこなかった戦時中の女性たちの声を掬いあげる活動を行っている。第2次世界大戦中、有楽町の東京宝塚劇場に学徒として動員され風船爆弾作りを行った少女たちを描いた長篇『女の子たち風船爆弾をつくる』(文藝春秋社、2024年)では、第78回毎日出版文化賞(文学・芸術部門)を受賞した。
本展では、「大文字」の歴史の影に埋もれてきた戦中の少女たちの声を当時雙葉高等女学校に通う学生だった実在の人物「Y」に託して、小林が描く「Y」のポートレートのほか、「Y」自身が学生時代に描いた絵画や「いろはうた」などと共に辿る。また、少女たちが戦中にも眺めたであろう「桜」を振袖の裏地絹に描いたシリーズなどの新作も発表する。
小林エリカ「Yの一生 The Life of Y - ひとりの少女」
会期:4月12日(土)~5月31日(土)
場所:Yutaka Kikutake Gallery Roppongi(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 2F)
時間:12:00~19:00
休館日:日月祝
3. ルー・ヤン、ドク | DOKU the Creator − 独生独死 创造者(PARCEL)
代表シリーズ「DOKU」が新たな境地へ
現在上海と東京を拠点にするルー・ヤンは、人間の身体と精神のデジタル化への関心に根差しつつ、漫画、アニメ、ゲームなど現代日本のポップカルチャーと、仏教思想、最新テクノロジーを融合させたスタイルで作品制作してきた。本展では、その中からルーの代表シリーズ「DOKU」の最新作「DOKU the Creator − 独生独死 创造者」を展示する。
「DOKU」は釈迦の教えである「独生独死、独去独来(私たちは一人で生まれ、一人で死ぬ)」に由来しており、アートのオリジナリティ、制作プロセス、価値、そして作家性の境界を探るための問いを投げかける作品となっている。同シリーズにおいてルー・ヤンは自身をデジタルアバターにした「DOKU」を創り、性別、国籍、そして生死を超越する意識を宿らせてきたが、本展では「DOKU」を自律した芸術的存在としても位置づけており、作者性の力学を静かに揺さぶりながら、創造者と創造物の境界を問い直す契機を観客に促す。
ルー・ヤン、ドク | DOKU the Creator − 独生独死 创造者
会期:4月19日(土)〜6月15日(日)
場所:PARCEL(東京都中央区日本橋馬喰町2-2-14 DDD hotel 1F)
時間:14:00 ~ 19:00
休館日:月火祝
4. 「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」(東京都現代美術館)
過去の代表作と近・新作約100点で創作の全貌を展覧
日本を代表する造形作家である岡﨑乾二郎(1955-)の創作の核心に迫る大規模な展覧会。1980年代初頭に「あかさかみつけ」シリーズで注目を集めて以来、絵画、彫刻から建築まで複数のメディアで展開してきた造形的な仕事を総覧する。岡﨑は絵画、彫刻のみならず、建築や環境文化圏計画、絵本、ロボット開発などの幅広い表現領域でも革新的な仕事を手がけ、さらには文化全般にわたる批評家としても活躍してきた。
本展覧会のタイトル「而今而後」は、『論語』のこれから先、ずっと先もという意味の一節から取られている。2021年以降、岡﨑は社会的な情勢と個人的経験の2つの変化のなかで、思考を位置づける時空の枠組みについて、大きな転回を迎えたという。本展では過去の代表作に加え、その21年以降旺盛に制作された新作・近作約100点を発表する。
「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」
会期:4月29日(火祝)~7月21日(月祝)
場所:東京都現代美術館 企画展示室 1~3F(東京都江東区三好4-1-1)
時間:10:00~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(7月21日を除く)
5. 児玉房子「1960-1980」(The Third Gallery Aya)
1960年代から80年代までの「日本の姿」を見つめる
1945年生まれの写真家、児玉房子の同ギャラリーでは4度目となる個展。児玉は1970年に「世界写真年鑑」(平凡社刊)に選出、93年に日本写真協会年度賞を受賞した。70年から2018年の終刊まで富士ゼロックスPR誌「グラフィケーション」で作品を発表し続けたほか、新聞、単行本などにも活動の幅を広げてきた。本展はフランスの出版社Chose Communeから発売された写真集『Fusako Kodama 1960-1980』の出版記念展覧会でもある。
会場に並ぶのは、写真の仕事を本格的に始めた1960年代から80年代まで、途切れることなく制作し続けてきた作品の数々。東京を中心にしながら、日本の様々な場所を訪れて撮ったイメージは、人々が話し、笑い、立ち止まったりしながら生活してきた様子と、変貌する日本の姿を活写している。5月9日(金)19:30~は児玉と同ギャラリー代表綾智佳のトークも(有料)。
児玉房子「1960-1980」
会期:5月9日(金)~6月7日(土)
場所:The Third Gallery Aya(大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル2F)
時間:12:00~19:00(土曜は17:00まで)
休館日:日月※火はアポイントのみ